鎌倉期の平家の落人伝説~七郎山伝説~【R5】8月4号

 獅子島には壇の浦の戦いに敗れた平家武将にまつわる二つの「キジの伝説」が残っている。時を越えて,薩摩の藩政時代に敵方の英雄伝説として一部混同したものと考えられる。

平家の落人伝説~七郎山伝説~

 源氏の追っ手が獅子島にも迫り,落ち武者の大将たちは山頂(七郎山)まで退去したが部下は全員戦死し,大将一人追っ手の目をくらまし隠れ場所を探し求めようとしたところ,数十羽の「キジ」が武将に驚き一斉に飛び立ち騒いだため追っ手に発見され首を挙げられてしまった。

 まさに死なんとするに当たり武将は,天を仰ぎ,眼を見開き,口をいからし「キジ」を睨みつけ,「今日限り,この島に我が魂魄(こんぱく)は止まじ,悪鬼となりてこの島の「キジ」は呪い殺さん」と絶叫した。その日のうちに獅子島の「キジ」はことごとく死に,この後も獅子島に「キジ」が飛んでいくと直ちに死ぬという言い伝えも残っている。  

 南九州には平家の落人伝説が多く残っている。獅子島の二つの落人伝説と同じように他にも雉に関するものがある。キジは日本の国鳥で人気のある狩猟鳥である。鹿児島県内の数軒の農家で人工繁殖が進められ、放鳥が行なわれているようだ。生息環境として雑木林や草原,丘陵地などに生息している鳥であるが,獅子島では殆ど見かけないそうだ。

※ 参考・引用文献:北薩民俗学研究会研究誌・東町郷土史・出水郷土誌…  

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