お爺ちゃんの思い出NO3「外トイレ」

 子どもの頃,お爺ちゃんの家に行くたびに,一つだけどうしても好きになれないことが便所でした。戦後建てられた農家以外の住宅は,家の中にトイレがあるのが一般的になっていました。しかし,農家の多くは,畑のたい肥として利用していたので,家の外に便所があるのが普通でした。

 お爺ちゃんの家は,さらに変わっていました。なんと,便所と風呂が同じ小屋の中にあったのです。今となってはその理由ははっきりしませんが,小屋の近くに井戸があったので,水汲みの手間を減らすためだったのかもしれません。

 また,当時普通の家では「ちり紙」はなく,その代わりに小さく切った新聞紙が置いてありました。お客さんが来るときだけ,母がちり紙に変えていました。外で遊ぶときは,母がいつもフキの葉を持たせてくれました。

・ウィキペディアより

 でも,やっぱりお爺ちゃんの便所は怖かったのです。大きな板が二枚,便槽の上に渡してあり,その上にまたがって用を足すのですが,その板がぐらぐら揺れるのです。落ちそうで冷や汗をかきながら用を済ませていました。

・ウィキペディアより

 さらに,壁にワラがかけてあり,端を手で持って使うのです。お爺ちゃんから使い方を教わり実際使ってみると痛くてたまりませんでした。それ以来,どうしても我慢できない時以外は,自分の家に帰ってトイレを済ませるようになりました。あのトイレの風景と,そして板の揺れ~今でも鮮やかに思い出します。トイレ事情一つをとってもあの不便さが,なぜか少しだけ懐かしく感じるのです。

 現在,日本のトイレが世界で一番清潔であると言われており,公共トイレにもウォシュレットが備えてあり海外からの旅行者が驚くそうです。昔の日本の便所の不便さがあったからこそ,今があるのだと思うのです。

タイトルとURLをコピーしました