アメリカのユニセフ脱退

湾岸戦争の1兆円

 日本は湾岸戦争の際,総額で1兆7,500億円という巨額の財政支援を行いました。これは国民一人あたり1万円以上の負担となるものでした。しかし,憲法上の制約もあり,財政的な支援という形でしか貢献することしか出来なかったのです。その結果,戦後クウェートによる感謝広告において「日本外し」されるなど,国際社会ではその貢献が報道されず,評価も得られませんでした。

 これほど巨額な支援を行いながらも,その事実すら国際的に知られていなかったことを,当時の私は非常に残念に感じていました。

 その後,更に人的貢献も求められ,結局自衛隊を派遣し地雷除去などを行うことになりました。最初から人的支援を行えば,こんな巨額な支援は必要なかったのです。このように,危機管理のない日本は同様なことを繰り返しているように思われます。何かが起こってから議論を始め,対応策を講じるという,常に行き当たりばったりの外交しかできない国なのです。事前にあらゆる事態を想定し,準備を進めることさえ,許されないような国内の一部風潮だけを強調して報じる新聞社すらありました。

 もともと日本人の感情としては,戦争当事国(中東の原油産出国)のいずれか一方を支援することに対して違和感を抱く方が多かったと思われます。しかしながら,現実にはアメリカに追従せざるを得ない状況もあり,政治的な中立を貫くことの難しさがあったのかもしれません。とはいえ,現在のウクライナ支援と過去の対応を比較する際には,その違いを冷静に見極める姿勢が求められます。 

 いずれの国においても同盟関係を持つ以上,完全に中立な立場を維持することは現実的には困難です。そのため,日本は国際社会における責任と役割を踏まえ,今後どのような立場を取るべきかについて,国家として明確な方針を予め示しておく必要があります。同時に,私たち一般市民もまた,日本のあるべき姿や進むべき方向について,自らの立場から改めて考えを深めていくことが求められるのではないでしょうか。

国際協力の在り方

 わたしは災害地への募金活動や国際間の協力そのものには大賛成ですが,立場を明確にし,国際社会に発信していくことも日本を理解してもらう上で大切なことです。

 日本以外の中国やアメリカ,欧州などの経済大国は非常にうまく広報活動を行っています。「現在日本も大変なのですが,これは日本からの支援です。困ったときはお互い様です。日本が困った時は協力してください」と,はっきり伝えることが必要だと考えます。 

 世界情勢を考えると日本としてもいつ何が起こるか分からない混沌とした時代になりました。今後の日本の安全保障を考えると,少しでも我が国の立場を主張して欲しいのです。この手のことを言うと,それは「純粋な募金」ではないと言われることも分かっていますが…。かつての余裕ある日本とは違うのです。

かつて取り組んだユニセフ活動

 私は現職中,毎年の恒例行事として,ユニセフ募金や出前授業,空き缶拾い,さまざまなイベントへの参加などを児童会とともに取り組んできました。こうした活動は,学校や子どもたちにとって社会とのつながりを感じる貴重な機会となり,大変意義のあるものでした。
 さらに,校内での取り組みだけでは十分ではなかったため,地域のPTAや公民館の役員の方々にもご協力をお願いしてきました。皆さんそれぞれの仕事で忙しいこともあり,思うように進みませんでした。そんな中,老人クラブの役員さんたちが中心となり,募金箱の設置やチラシの配布などに積極的に協力してくださり本当にありがたいことでした。学校だけでなく,地域全体でユニセフ募金に取り組めたことは,今でも良き思い出となっています。
 ところが,近年,ユニセフに関しては,募金本来の目的外の使途や膨らんだ諸経費(人件費や宣伝費),特定の国家や団体との関係性,広告の内容に至るまで,さまざまな情報が出回るようになりました。中には真偽不明なものや,見ていて違和感を覚える内容もあり,なおさら活動の透明性や説明責任の重要性を改めて感じています。
 その中でも,日本人の感覚には馴染みにくい遺産や香典返しまで,なりふり構わず募金対象にするようになったのは,正直なところ戸惑いを覚えます。今後もこの活動を続けていくのなら,より丁寧で具体的な情報提供が求められるのではないかと思います。信頼の上に成り立つ活動だからこそ,その信頼を支える一層の配慮が必要だと思います。 

 東日本大震災時に海外から寄せられた義援金の額で,アメリカと台湾からは共に29億円以上の義援金が届けられました。日本は法的制約により自衛隊の国際支援を積極的に派遣できない事情があります。そんな中,台湾は能登半島地震でも「助け合うのは当然」と約25億6,000万円を寄付してくださいました。日本が困っている時,いつも手を差し伸べ,寄り添ってくれる有り難い隣人なのです。

米のユネスコ脱退

 昨日(7月22日),世界一の拠出国・アメリカがユネスコ脱退を表明しました。中東問題など複雑な要因が絡んでいるのでしょうが,(何も言えない日本人)何だか日本に更なる負担が,圧し掛かるような気がします。アメリカは国連の実態や自らの主張を踏まえ,資金だけでなく,運営面にもきちんと意見を伝えることの重要性を示してくれました。

 また一部報道では,数年前から国連やユネスコにおける中国の影響力が指摘されています。ユニセフへの拠出額で中国は上位20組織に入っていないにも拘わらず,発言力は強いようですので,是非ユニセフが支援した国を明らかにしてください。ネット情報によると,アジア・アフリカには中国と協力関係が深い国々が多いそうです。ユニセフのホームページには「偽情報やデマに注意」と掲げていますが,事実でなければ高額過ぎると報道されている日本やアメリカのユネスコの幹部職員の給与や福利厚生などより細かなデータを明確にしてください。 

ユニセフ以外の新たな支援機関

 一方,日本ユニセフ協会は世界でも二番目の支援規模でありながら,その発言力は相変わらず弱い印象です。また,寄付金の使途に関する情報開示についても,地域別の大まかな分類しか見当たらず,国別や項目別のより具体的な支出先を知ることができませんでした。

 また,ホームページの写真にはアフリカ系の子どもが数多く登場し,支援がアフリカの子どもたちに行き渡っているイメージですが,実際にどの国にどの程度,支援されているのか,透明性を高めてほしいと思います。もし運営面で問題があるのなら,日本もそろそろ物申すことができる国になって欲しいのです。それができないのであれば,海外支援や寄付活動は,何もユニセフを通さなくても,外務省出先機関や日本にある各国大使館,現地日本法人などから直接その国に支援した方が感謝され,人件費・諸経費もかからず効率的だと思います。

 日本の国内情勢を考えると,震災復旧や日本人の貧困問題も深刻であり,ユニセフへの運営面の改善を求めることなく,拠出を続ける余裕は今の日本にはないはずです。

繰り返されるユニセフ寄付のCM

 また,ネットを開くと毎日のようにユニセフの寄付広告が繰り返し表示されています。最近では遺産や不動産の現金化(土地家屋を売った現金),株式,骨董品,祝儀返し,香典返しなど,ありとあらゆる形の寄付が呼びかけられています。流石にこの発想は日本人にはなく,この取組そのものに強い違和感を覚えます。同じCMを欧米で流したらきっと批判が上がるはずです。アメリカが脱退した今,更なる奇抜な寄付が登場するのではないかと危惧しています。

遺産寄付の問題点

 特に「遺産寄付」に関しては,家族間のトラブルを考慮しているとは思えません。例えば,疎遠だった家族が,葬儀後に遺産の預貯金やマンション等がユニセフに寄付されたと知れば,大きな混乱を招くでしょう。遺留分が保障されているとはいえ,遺産には現金だけでなく,放置した山林や田畑,老朽化した家屋なども含まれていることも多いそうです。また,地方に行くと近くの親戚に迷惑がかかるという理由から「相続放棄」もできないそうです。遺族にとってはその処分が困難なケースが多く,贈与された現金で相殺したり,残された子どもたちで負担しあったりしていることが多いのです(司法書士から聞いた話)。そんな状況の中,遺留分もお構いなしで,僅かな望みの現金すら持っていかれるのです。

 このような現状を踏まえた上で,寄付プログラムは作られているのでしょうか。現金や価値のある資産だけを受け取り,残された困難な処理は遺族に丸投げしているようです。近年,学校近くの放置された危険な建物を,子どもの安全確保面から税金で撤去したニュースも聞きます。地方の空家をはじめ負の遺産に悩んでいる人たちが多いのです。認知症には至らずとも,判断力が低下した高齢者が感情任せに寄付したとしても,最終的に日本の税金で処理していくしかないのです。そのような可能性が少しでも残る取組には疑問を感じます。わたしは,これまで勤務してきた学校で,地域ぐるみでユニセフ募金に取り組んできただけに,最近のCMや報道を見て思うことを書き綴りました。

 ネット情報によると,国連やその下部組織であるユネスコなどの国際機関には,既得権益が形成されていることが多く,特定の国や役員が経済的・政治的に恩恵を受けていると言われています。しかし,日本は依然として「お金を出すだけの何も言わない国」のように見られています。2019年に国際捕鯨委員会を脱退した時のように正面から「国益を主張できる国」になってほしいのです。

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