トカラ列島の歴史(1)【R5】9月5号

中国恥地図に引かれたトカラ列島の国境線

 これまでもロシアとの北方四島の帰属問題が話題になっていました。その後,ロシアのウクライナ侵攻や中国による南沙諸島の領土問題などが社会問題となり,新聞やテレビ等で報道されると,さすがに心配になります。また,今回新しく中国が発表した「恥地図」に対して,アジア各国から非難が一斉に広がりました。この地図には台湾の東側に線が引かれ,本県のトカラ列島まで含まれていることに驚かされました。尖閣諸島の後,トカラ列島の無人島や岩礁などに漁船団が本当に押し寄せるかもしれないのです。国境紛争は全世界で現在も大きな問題となっており,日本は島国だから安全とはいえなくなっています。

・十島の無人島・横当島

 中国の「恥地図」とは,1933年(昭和8年)に上海で発行された小学校用地理教科書に使用された地図であり,中国が欧米や日本により失った領土であると主張しています。この地図には,日本統治下の台湾,沖縄を含む琉球群島,マレー半島,樺太などが含まれており,これらの地を取り戻すことが中国では当然の権利とされています。

 1930年代の中国は,満洲事変,国共内戦,日中戦争などの大変な時期で,このような時代に作られたのが恥地図なのです。中国は南シナ海における領有権を主張する際,二千年前の漢王朝から唐の時代にまで遡る文献や古地図を根拠としています。この主張に基づき,海警局の巡視船を派遣し,周辺国の船舶を強制排除する衝撃的な映像が流れて国際社会から非難を受けています。

 さらに奄美やトカラ列島の東側に国境線を引き,日本の敗戦によって返還された台湾の領海に沖縄・奄美・トカラ列島を含むと主張しようとしているようです。これは史実に基づかない無理な主張であり,今後沖縄のルーツは縄文や弥生時代に中国から渡った人たちとさえ言い出しかねません。

 やはり県民として,トカラ列島の帰属について歴史的に知っておく必要があります。そのため沖縄の公式歴史に「薩摩による琉球侵攻」が刻まれているのであれば,「琉球による奄美征伐」の史実も明記してほしいです。そして,かつて「奄美世」として自由に暮らしていた奄美諸島が琉球に征服された史実を説明した上で,十島や奄美群島が「恥地図」に描かれている科学的・歴史的根拠を中国側に示してもらう必要があります。また,日本側がこの件で無言を貫くことは、認めたことに繋がるという国際的な常識があります。国が何も言わないのであれば,鹿児島県としてこの件は受け入れられないことを国際社会に問うべきです。

 現在,報道などで注目されている南沙諸島(南シナ海)の人工島問題は,南シナ海だけでなく,やがて東シナ海にまで広がるだろうという指摘があります。この恥地図には,中国が領有権主張に用いる独自の境界線「九段線」を拡大した「十段線」が記されているのです。 

軍事力による東シナ海の実行支配

 中国は,南シナ海の問題が収まるまで日本を刺激しないようにしていますが,「兵法三十六計」の国なのです。次の「十一段線」が沖縄・奄美・吐噶喇にまで及ぶのではと懸念されています。尖閣諸島についても当初は見向きもしなかったのに,海底油田の存在が言われると領土問題へと発展してきました。南沙諸島同様に,台湾有事などの混乱に乗じて,日本領の東シナ海の岩礁や砂州を埋め立て,軍事力で実行支配するかもしれないというものです。 

 この地図を見る限り,中国は琉球弧の一部「琉球文化圏」(琉球国)を自国の領土と考えているようです。歴史上,琉球諸島が中国に征服された史実もなく、根拠として考えられるのは冊封関係ぐらいしかありません。

 日本は島国で国境線は海上の見えない線であり,陸地のように川や山などの目印があるわけではありません。尖閣だけに気を取られている場合ではなく,船団が次に現れるのは十島の無人島や岩礁かもしれません。

 今まさに,中国とフィリピンが「中国恥地図」を根拠に衝突しているニュースを目にします。これまで「中国がそんなことをするはずがない」と識者やマスコミが論じてきましたが,最近のワイドショーなどでは世論を気にしてか,反対の声を上げるコメンテーターが増えているように見えます。本心はどうなのでしょうね。

 海洋という目に見えない国境を実行支配(漁船を沈め漁師を滞在させるなど)により少しずつ広げていき,太平洋への通路や埋蔵鉱物,漁業権を確保しようとしているように思えます。最悪のシナリオを考え,国として備えることが必要です。

横当島での仮想シナリオ

 ある日,海警局船が十島村の無人島・横当島近海で漁をしている漁船に対して,「十島の漁師の皆さん。先日配った中国の恥地図を見ましたか。ここトカラはかつて奄美と同様に中国の属国であった琉球国を通して征服した島々ですので,中国の領土です。直ちにこの島から離れてください。」と言って放水を始めました。

 「属国とは何を根拠に言っているのですか?」と漁師が聞き直すと,「まず有史以来、中国は琉球を通して日本に文明や貨幣経済などを与え,日本という国が形成されました。その後,中世に入ってからも琉球は冊封関係を求めて,自ら中国に近づいてきました。私たちは望み通り琉球を属国にし,琉球国王は我が皇帝から位を授けられ貢物のお礼に大量の下賜品を与えたのです。

 その結果,琉球は貿易により莫大な利益を得て発展してきたのです。そしてトカラ列島の住民も多額の旅費や必要経費を受け取り,奄美の支配下で交易の中継基地として今日まで繁栄してきました。トカラ列島は奄美の属国であり,奄美を琉球が征服したことで,トカラも中国の領土となるのです。」と海警局の船からマイクで答えが返ってきました。

 十島の漁師が「しかし1609年,薩摩が琉球に侵攻してトカラや奄美を直轄地にしたのですよ。」と反論すると,しばらくの沈黙の後,ボリュームをさらに上げて,「薩摩の侵攻は非人道的で無理やり奪い取ったものなので,国際法上,違法であり認められません。私たちは平和を愛する民族ですので,争いが始まる前に直ちに出て行ってください。」と誇らしげに言うと放水を続けました。

 それでも漁師は続けて,「では冊封貿易は室町幕府も行っていたので,いつかは属国として日本本土も攻めるのですか?」と問い返しました。すると最後に船長らしき高官が現れ,マイクを外し,「今はしません」とはっきりした声で答えました。…知らんけど。

 ………………。

※ しかし,近くの(?)国も同様に「言い続ければ,嘘も事実になる」ことを知っています。これは国境を接する国々ではよくある話で,あながち仮想のシナリオでもないのです。これが中国に伝わる「兵法三十六計」の外交の基本なのです。

※ 参考資料として「兵法三十六計」を載せておきます。

兵法三十六計

 中国の南北朝時代に編纂された兵法書で,戦術を六つの系統に分け,さらに三十六種類に分類しています。著者は南朝宋の将軍,檀道済とされています。この書物には,「三十六計逃げるに如かず」という有名な格言が含まれており,多くの故事や教訓が収録されています。そのため,民衆の間で広く流通し,日常生活においても幅広く活用されています。

1 戦いの主導権を握っている場合の定石
 ① 敵に繰り返し行動を見せ見慣れさせておき,油断を誘って攻撃する
 ② 敵を一箇所に集中させず,奔走させて疲れさせてから撃破する
 ③ 同盟者や第三者が敵を攻撃するよう仕向ける
 ④ 直ぐに戦闘せず,敵を撹乱して主導権を握り,敵の疲弊を誘う
 ⑤ 敵の被害や混乱に乗じて行動し,利益を得る
 ⑥ 注意をそらし敵の動きを翻弄し,防備を崩してから攻める
2 余裕を持って戦える,優勢の場合の作戦
 ① 偽装工作をわざと露見させ,相手を油断させ攻撃する
 ② 偽装工作によって攻撃を隠蔽し,奇襲する
 ③ 敵の秩序に乱れがあれば,あえて攻めずに放置して敵の自滅を待つ
 ④ 敵を攻撃する前に友好的に接しておき,油断を誘う
 ⑤ 不要な部分を切り捨て,全体の被害を抑えつつ勝利する
 ⑥ 敵の統制の隙を突き,悟られないように細かく損害を与える
3 相手が一筋縄でいかない場合の作戦
 ① 状況が分らない時は偵察を出し,反応を探る
 ② 死んだ者や他人の大義名分を持ち出して,自らの目的を達する
 ③ 敵を本拠地から誘い出し,味方に有利な地形で戦う
 ④ 敵をわざと逃がして気を弛ませたところを捕らえる
 ⑤ 自分にとっては必要のないものをおとりにし,敵をおびき寄せる
 ⑥ 敵の主力や,中心人物を捕らえることで,敵を弱体化する
4 相手がかなり手ごわい場合の作戦
 ① 敵軍の後方支援を壊して,敵の活動を抑制し,あわよくば自壊させる
 ② 敵の内部を混乱させ,敵の行動を誤らせ,味方の望む行動を取らせる
 ③ あたかも現在地に留まっているように見せかけ,主力を撤退させる
 ④ 敵の退路を閉ざしてから包囲殲滅する
 ⑤ 遠くの相手と同盟を組み,近くの相手を攻める
 ⑥ 攻略対象を買収等により敵を分断して撃破する
5 同盟国間で優位に立つために用いる策謀
 ① 敵の布陣の強力な部分の攻撃を他に押し付け,自軍の立場を優位にする
 ② 敵以外の相手を批判し,間接的に人心を牽制しコントロールする
 ③ 愚か者のふりをして相手を油断させ,時期の到来を待つ
 ④ 敵を巧みに唆して逃げられない状況に追い込む
 ⑤ 小さな兵力を大きく見せかけて敵を欺く
 ⑥ 一旦敵の配下に従属しておき,内から乗っ取りをかける
6 自国がきわめて劣勢の場合に用いる奇策
 ① 土地や金銀財宝ではなく,あえて美女を献上して敵の力を挫く
 ② 自分の陣地に敵を招き入れ敵の警戒心を誘い,攻城戦や包囲戦を避ける
 ③ スパイを利用し,敵内部を混乱させ,自らの望む行動を取らせる
 ④ 人間は自分を傷つけることはないと思い込む心理を利用して敵を騙す
 ⑤ 正面から当たらず,計略を連続して,足の引っ張り合いをさせる
 ⑥ 以上の三十六計でも勝ち目がないなら,戦わず全力で逃走する

★ 中国にはこれまで多くの戦いを繰り返してきた歴史があります。戦の吉凶は,従うべき法則を示すことによって,運命を主体的に切り開くことを促すものです。「禍を転じて福となす」というのが「易」の道なのです。兵法の原点は優勝劣敗にあり,双方の力関係が大きく開いている場合には力で押さえればよいのです。しかし,力関係が拮抗してくると,相手の弱点を突かなければ勝てません。

 そこで,相手に隙を見せるよう仕向けたり,盲点を見破ったり,錯覚を引き起こさせる必要があるのです。兵法は虚実に尽きるといわれますが,相手もその点を熟知しているため,同じような策を仕掛けてきます。したがって,相手の心理を読み,その裏をかく計略を考える必要があるのです。この「兵法三十六計」を読むと戦で必要な考えや策略を想定することができます。

※ 世界中の領土問題を抱える政治家は当然この程度のことは考えているでしょうね。日本の政治家の皆さんは「こんな卑怯なことをせず,まず相手を信じることから始めましょう」と言いそうですね。

★ 関連記事「沖縄が日本から独立?その2(6/22)」「沖縄が日本から独立?その1(6/21)」

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