喜入地名散策【3】

14 その他 喜入の地名・中字名

山岳に多い喜入の地名

喜入の地名や中字名を調査すると,中世の地名起源が多いことが分かります。

ア 仏教・修験者に関わる地名

 「権現山」「虚空蔵岡」「大神山」「座頭山」「地蔵山」などの地名があります。

イ 浸食・崩壊地名

 「木佐貫岡」「上猿山」「責ヶ原(古戦場の原,瀬目の沢の行き止まり,ぎりぎりの所)」「ツブシガ原(潰れから崩壊地形,川成田の侵食地形,潰地の免税地)」「母子谷(ホコタン凸凹の窪地)」「美女ヶ谷(美女伝説が残る谷,ビショから湿地・侵食地)」などがあり,「座頭ホキ」「クエ(崩)」「鍋(滑)」といった地名も見られます。

ウ 迫・宇都・瀬戸・谷地名

 「宇都山」「大宇都」「宇津木迫(ウツギ~宇都と同じ)」「瀬戸口(両側より山の迫った狭い谷,谷間の狭くなった狭い路地,川の狭くなった所,海峡)」などが含まれます。

エ 比良(坂と同じ傾斜地)・キワ(際)地名

 「岩比良」「日当比良」「木場比良」「屋敷比良」「集比良」「桑(際の転化)水流比良」などがあり,喜入には比良下,岩比良,旭比良,日当比良,石比良,木場比良(コバは伐採地,開墾地,焼畑農業の地に適する山の斜面),屋敷比良,集比良,桑水流比良,拾穂(ヒレホ)比良保~山に囲まれた小平地など比良地名が多く見られます。

オ 木場(伐採地,開墾地,焼畑農業,木材集積地)地名

 「鬼木場(鬼とは奇岩のこと)」「内木場」「平(坂)木場」「折木場」「奥木場」「油木場」「四油木場」など,木場地名は山の斜面近くに二十数か所認められます。

カ 多々良地名

 藩政時代,喜入海岸は砂鉄の一大供給地だったそうで,一倉に製鉄炉跡があります。近くの「多羅ヶ迫頭」「勝負谷」などのタタラ地名は,砂鉄やソブ菖蒲・勝負はソブの当て字,地中の鉄分が露出し油状に赤く光る油水)など鉄の材料を採取する谷で,タタラ製鉄所では燃料の火力は木材(炭)が必要で山間部に多い地名です。菖蒲谷は菖蒲の花が咲く谷ではありません。

※ 鉄を溶かすには,枯れ木をそのまま燃やすだけでは火力は弱く,より火力の強いを燃やし,フイゴで風を送り更に高温状態をつくり鉄を溶かしていき,状態の良い鉄を作り出すのです。山奥に多々良地名が多いのは大量の木材の供給地だからなのです。

キ 油木原

 「油木原」は菜種や柚木などから油を採取する畑で,寺社領が多い地域です。「黒地蔵(畔地蔵)」「黒須籠(クロスゴモイ山峡の谷の畔)」もあります。

ク 桑・滑・ホキ・鍋地名

 「桑」は,そば・わき・キワ(際)の転化で,「クエ(崩)」や「ハ(端)」の約かもしれません。「桑水流」は川岸の崖地の水流を指します。「滑る(スベル)」「舐める」「滑(ヌレル・切り落とすより崩壊地)」「ホキ(保木・甫木・崩毀ホウキ)から崖,山間の狭い谷など」「山田ホキ」「座頭ホキ」「大ボキ」「大鍋」「小鍋」「鍋駄底」「大鍋頭」などの鍋地名は滑らかな平坦地を指し,急傾斜地の意味も含まれます。

ケ 鶴(水流)地名

 「鶴」は水流の瑞祥地名で,水流・津留・都留・靏など川沿いに多く,水底がツルツルしていることから発生した川地名です。「桑水流」は崩壊の急流川,川岸の崖地にある水流を指し,「論水流」は水利権などの論争になった川地域で,崩壊や流れが変わり土地争いが起こりがちな地です。

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