戦時中,義父が暫く滞在した呉
今回の旅の目的が,高知のアンパンマンミュージアム,尾道の千光寺,そして呉の大和ミュージアムを訪れることでした。なかでも大和ミュージアムは,義父が暫く滞在した地であり,特別な思いを抱いていた場所です。しかし,あいにく大規模リニューアル工事のため休館中で,入館することができませんでした。その代わりに,「大和ミュージアムサテライト」を訪れ,展示を通して呉の歴史と向き合う時間を持つことができました。
義父が乗船していた駆逐艦「涼月」は,三菱長崎造船所で竣工されました。その後,呉海軍工廠において数回にわたる復旧工事を受けるなど,呉との関わりも深い艦船だったようです。幾度もの修理と整備を重ねながら,激動の時代を駆け抜けていきました。
やがて涼月は,戦艦大和の護衛艦として徳山沖から沖縄へ向けて出港します。しかし,枕崎沖での戦闘において大和は沈没し,涼月もまた甚大な被害を受けましたが,辛くも佐世保まで帰還を果たしたのです。
今回の旅は,単なる観光ではなく,家族の歴史と静かに向き合う機会でもありました。また,展示を前にしながら,義父が見たであろう海やその胸中に思いを巡らせ,平和の尊さをあらためて心に刻むひとときとなりました。
亀山神社と音戸大橋
大和ミュージアムもさることながら,義父が戦時中に数か月間この地に滞在し,足を運んだであろう亀山神社にも,ぜひ参拝したいと考えていました。家族の記憶をたどる旅でもありました。
また,昭和40年代の社会科の教科書に写真付きで紹介されていた音戸大橋も,以前から一度訪れてみたいと思っていた場所でした。この橋が架かる音戸ノ瀬戸は,古くから海の難所として知られています。一方で,瀬戸内海有数の重要な航路であり,呉から瀬戸内海へ抜ける最短ルートでもあり,そのため,駆逐艦「涼月」もこの海峡を往来していたのではないかと思っています。

ネットで資料を探してみましたがその記録は見つかりませんでした。それでも,自分の目で確かめてみたいと思い,実際に音戸大橋を渡りました。そして真偽はともかく,涼月の規模であれば十分の広さだと確信しました。歴史や家族の記憶に思いを重ねながら歩いた時間は,楽しい思い出を作る一時となりました。

・教科書に写真付きで紹介されていた音頭大橋
呉にある亀山神社は,軍港呉湾を一望できる入船山(亀山)の高台に鎮座しています。明治期に呉に海軍鎮守府が設置され,軍港として発展するとともに,呉市の氏神様として広く尊崇されるようになりました。もとは八幡神社で,応神天皇・仲哀天皇・神功皇后をお祀りしていて,一般的には「八幡様」として親しまれています。この地が入船山・亀山と呼ばれていたことから,亀山神社と称されるようになりました。

海軍呉鎮守府の開庁後は,呉港を出入りする海軍艦船の将兵たちもその都度参拝していました。義父もこの地にしばらく滞在していて,神道であった父も幾度となく参拝したのだろうと思います。今回の旅では,私たちもぜひお参りしたいと思っていました。
天一号作戦の経路

※ 太平洋戦争末期に実施された沖縄への特攻作戦「天一号作戦」では,出撃艦隊は当初,大隅海峡を南下して沖縄へ向かう計画でした。しかし途中で敵機に発見され,進路を西へ変更します。この時点で作戦はすでに厳しい状況に置かれていました。旗艦大和を中心とする艦隊は出撃から一日足らずで壊滅し,大和も沈没します。一方,駆逐艦涼月は大破しながらも佐世保へ帰還しました。この結末は,制空権を握る米軍と有効な航空援護を欠く日本側との戦力差を如実に示しています。大和の沈没は日本海軍の象徴の終焉であり,戦局の決着がすでに決していたことを物語る出来事であったといえるでしょう。

時間帯で閉鎖するフロント
今回の旅行において,たいへん驚く出来事がありました。翌朝8時40分にチェックアウトしようとフロントへ向かったところ,シャッターが下りており,窓口は閉鎖されていました。横のスペースに「当ホテルでは各フロアに防犯のため監視カメラを設置しております。不審者は警察に通報いたします。〇✖ホテル」との警告文が掲げられていました。旅は人との出会いも含めて思い出になるものですが,客室を提供するだけで旅人への接客は必要ないと考えているかのように感じられ悲しくなりました。

・ からだを丸め街路樹に留まっていたスズメ(上)とシャッターが下りたフロント(下)。
ホテルに宿泊し,チェックアウト時間帯にもかかわらずフロントが無人で閉鎖されていたのは,私にとって初めての経験でした。そんなホテルに泊まる方が悪いと言われそうですが,予約の段階でそのようなシステムであることを本当に知らなかったのです。
しかし同時に,地震や火災など一刻を争う災害や,犯罪などの緊急事態が発生した場合,どのように対応されるのかという不安を覚えました。実際前夜,居酒屋へ出かけようと部屋を出た際,隣室前で若い女性がスマートフォンで確認の連絡を取り合いながら入室する場面にも遭遇し,防犯体制について改めて考えさせられました。
この警告文を私なりに穿った解釈をすると,
「当該ホテルでは人件費削減の観点から,夜間から朝方にかけてフロントスタッフを配置していません。安全面では,警備会社が防犯カメラで見張っていますので御安心ください。そして不審者を発見した場合,近くの交番から警察が駆けつけて職務質問をするシステムです。なお警察には夜間,ホテルの近くを巡視するよう依頼しています。また,火事が起こった場合は近くの消防署員が駆けつけて対応いたしますので御安心ください。従業員の勤務は10時以降の部屋清掃からになります。その間は原則として,スタッフによる人的対応は行いません。昼からのチェックイン業務からフロントスタッフが対応しますので,それまでは連絡しないでください。当ホテルは他のホテルより格安な値段で客室を提供していますので,御理解・御協力のほど,よろしくお願いいたします」 知らんけど…。
何か「田舎の農作物の無人販売所」と勘違いしているような感じがしました。しかし,宿泊施設は利用者の安全(命)を預かる場所なのです。設備や通報体制だけでなく,無人時間帯の方針や緊急時の連絡手段を明確に示すことが,利用者の安心につながるはずです。今回の出来事は,宿泊者の安全を「警察や消防」に丸投げしているとしか思えないことでした。仮に大規模災害が発生したらこのホテルでの安全は諦めるしかないようですね。本来,安心して滞在できる体制が整っていてこそ,対価に見合うサービスと言えるはずで,近年の日本のホテル業界の在り様を深く考える契機となりました。
緩和された旅館業法~宿泊者の安全面は
| マンションのワンフロアでホテルを営業するには,「旅館業法」に基づく簡易宿所の許可に加え,「建築基準法」や「消防法」の基準を同時に満たす必要があります。自動火災報知設備は客室だけでなく共用廊下や階段にも設置が求められ,避難経路の幅員や非常用進入口の適合も重要です。また,驚いたことに,原則として「フロント設置義務」がありますが,自治体によってはICT機器を活用した無人運営も認められています。 しかし,旅館やホテルで最も大切なのは「宿泊者の安全」ではないでしょうか。火災や地震,外部からの不審者対応は一刻を争います。とりわけ命に係わるような重大事故は,寝静まった深夜に発生することが多いのです。事故が発生した場合,即応できる機能や態勢が不可欠です。形だけの基準を求めることではなく,日頃の訓練と責任ある管理体制こそが求められます。 これまで大きな火災事故を起こしたホテルはこれらのことがおろそかになっていたことを歴史が証明しています。安全を守れない施設に許可を与えてよいのか,私たちは改めてオーバーツーリズムの見えない弊害を考える必要があるのではないでしょうか。 |

・戦艦大和の碇と時鐘
★ちょいとブレイク

無人販売の在り方
このことは意見が分かれることでしょうが,先の無人フロントの議論と同様,あえて持論を述べたいと思います。
近年,コンビニのセルフコーヒーにおいて,レギュラーサイズを購入しながらラージサイズのボタンを押した行為が窃盗と判断され,懲戒免職に至った事例が報じられています。故意の窃盗ならいざ知らず,押し間違いであれば大変なことで,その結果,職を失い,家族まで路頭に迷ってしまうのです。(ニュースのコメント欄に,離婚や子どもが進学を諦めたというのがありました。)

単に盗む方が悪いと片づけるのではなく,商売の在り方を考えるべきだと思うのです。本来,コンビニの商品提供は従業員が担い,客は選んだ商品を会計するという仕組みが基本でした。しかし人件費削減と効率化の流れの中でセルフ方式が拡大し,利用者の操作と自己申告に委ねる状況が発生しました。その結果,操作ミスや不正の疑いが生じやすくなっています。とりわけ高齢者にとっては機器操作が負担となっている現実もあります。セルフコーヒーも客に入れさせて,後払い方式にすれば犯罪者を生むこともないのです。価格高騰によりおにぎりやペットボトルなど身近な商品まで値上がりし,コンビニ離れが進んでいるように感じます。今こそ,時代に即したサービスや営業スタイルの見直しが求められているのではないでしょうか。
また,コンビニをめぐる数々の訴訟や問題事例について,本来であれば厳しく追及すべき立場にあるはずのオールドメディアが,十分に機能しているとは言いがたい状況です。コンビニ各社が主要な広告主であるという事情が影響しているのではないかと感じざるを得ません。
同様に,スイーツや餃子などの無人販売所でも窃盗が相次ぎ,防犯カメラで確認後に警察へ通報する対応が常態化しています。冷蔵庫から選ぶ方式でなく,自動販売機のシステムにすれば被害は出ないはずです。人件費やコストを抑えることばかりで,最低限の設備投資は営業の基本です。
警察は公共の安全を守る機関であり,省人化経営を補完する機関ではありません。効率化やコスト削減ばかりで犯罪の発生が増える可能性は無視する商売の在り方ではなく,利便性と売り手の社会的責任を改めて問い直すべき時に来ているのではないでしょうか。

※「防犯カメラが作動し録画して警察に連絡します」~従業員を配置せず最低限の設備投資もしないで,警察をかってに多忙化させないでください。警察には緊急かつ優先的な職務があるのです。
同じ様に無人販売所でも,自動販売機のように,代金を投入しなければ商品が出ない仕組みであれば,異物混入などの食の安全を含めそもそも未払いは起こりません。人を雇わず,無人で販売し,被害が出れば防犯カメラを頼りに警察へ通報する。その結果,生活が困窮した人が摘発される構図は,あまりに安易ではないでしょうか。省人化に頼るだけでなく,犯罪を未然に防ぐための設備投資を行う姿勢こそ求められています。
