学校よもやま話「ニワトリの飼育」

教頭先生とニワトリの散歩

 離島での勤務時代のことです。校舎の前には小さな飼育舎があり,ニワトリが二羽飼育されていました。このニワトリたちの世話は飼育委員会の子どもたちが担当していましたが,ニワトリは子どもたちにあまり懐かず,運動不足になりがちでした。

 そんな中,先生方のスポーツ少年団の練習が終わった後,今度は教頭先生が校舎の見回りを兼ねてニワトリの散歩をさせるのが日課となっていました。教頭先生が飼育舎の扉を開けると,ニワトリたちは上段の巣からすぐに飛び降り,扉から出て散歩を始めます。先生の後を追って一列に歩く(3人の?)姿は,まるでカルガモの親子のような風景でした。

 毎回,校庭を二周していました。そして,二周の散歩が終わり,教頭先生がまた扉を開けると,ニワトリたちは自ら飼育舎に戻っていくのです。時には先生が忙しくて一周しかできないこともありましたが,その時の様子も面白いものでした。教頭先生が扉を開けると,ニワトリたちはもう一周するつもりで教頭先生を追い越して先を歩いているのです。扉を開けて待っている先生に気づくと,不満そうな足どりで戻ってくるのです。まるでマンガを見ているようでした。

 この面白いニワトリの散歩は,いつしか残業で残っている先生方の楽しみになっていました。テストの採点などで忙しくしていると,他の先生方が「散歩が始まったよ」と声をかけてくれるのです。私たち教員にとっても,ひと時の安らぎの時間となっていました。たまに校庭で作業をしていて校舎の窓ごしに何人かの先生方の姿を見ると,散歩が始まったことが分かります。

 この散歩は,他の先生がチャレンジしてもニワトリはついてきませんでした。私も試したのですが,ニワトリは飼育舎から出ようともしませんでした。きっと教頭先生との特別な関係性が築かれていたのでしょう。このエピソードは,ニワトリとの信頼関係や習性について学ぶ貴重な経験となりました。

飼育係の子どもたち

 小学校の飼育委員会の仕事は,動物の種類によって餌の確保や飼育方法が異なるため,大変です。ここではニワトリの飼育についてお話します。

 6年生にもなると慣れており,ニワトリも安心して従ってくれます。しかし,初めて世話をする子どもたちにとっては恐怖そのものです。大人でもやり方を間違えると怪我をすることがあり,私も大きな雄鳥にケンで蹴られて血まめができた経験もあります。

 飼育舎の中では一定のルールがあり,子どもたちはそれを理解しています。巣の中を掃除することはニワトリにとっても嫌なことであり,いったん外に出すか隅に追いやってから掃除をします。飛びかかってくる可能性が大きいからです。餌を食べているときは体を触ってもあまり抵抗されません。飼育委員の子どもたちとニワトリの間には細かな順番や約束事があり,それを守って世話をすれば,毎度のことで問題なく行えます。

 飼料の与え方も工夫しています。子どもたちは,餌を数か所に分けて与えています。その理由は,ニワトリのいじめで,弱いものが食べていると突いて食べさせないようにするからです。遠くにいても走ってきて邪魔をするので,餌を食べているときは子どもたちが中に入って,小さなニワトリたちもゆっくり食べられるように遮ります。

 たまに飼育舎を覗くと,段ボールで仕切りがされていることがあります。飼育委員会の子どもたちが,いじめられているニワトリを隔離するために作ったものです。

 子どもたちは曜日毎に穀物類と野菜類などをバランスよく与えています。穀物飼料は学校予算で購入しますが,野菜類は全校児童に呼びかけたり,係の子どもたちにお願いしたりして確保します。

 糞の処理も大変で,一輪車で体育館裏の堆肥小屋に運びます。夏場の堆肥小屋は発酵して湯気が出ており,これをかき混ぜる作業は臭くて子どもたちが嫌がるため,職員が行います。出来上がった肥料は学級園や学校園に撒き,古い土と混ぜて耕しますので,結構貢献しています。 

タイトルとURLをコピーしました