学校教育指導方法改善(2)「三人寄れば文殊の知恵」~グループ活動の充実《R6》2月7号

 

・ 指導方法の改善について 

 新採の頃,自分自身の授業に不安を感じ,先輩教師から助言を受けながら授業方法を改善していきました。まず,「板書の工夫」や「子どもたちの学び方」に焦点を当て,漠然と「学習の仕方」を教えるのではなく,「自ら考える学習の手引き」を作成することを考えました。指導方法の理論を学びながら,授業での実践を通して手引きを作り上げました。「学習の手引き」とは,ノートとは別に一年間かけ国語科の学び方・学習方法を中心に記録していくものです。

 国語科だけの研究に数年間かかりましたが,子どもたちが授業に積極的に取り組むようになり,学びが深まっていくようになりました。そこで,学習の手引きの活用法について紹介します。

学習の手引きの具体的活用法について

 学習の手引きの中身は,例えば「さしえの見方・味わい方」「場面の分け方」「学習計画のたて方」「言葉の調べ方」「一人調べの方法」「グループ活動の方法」「言語学習の方法㋐筆順のきまり」…などを扱います。その中の「㋐筆順のきまり」について説明すると,大まかな筆順の決りについて学習したことを手引きの中に書き加えていくことにしました。子どもたちが,漢字学習の筆順指導以外では,筆順をあまり意識していないことが見受けられたからです。

 例えば,①上から下へ書く「言」, ②横から縦に書く「十」, ③中から先に書く「小」, ④左から右に書く「川」といった具合にその日学んだことを手引きに書き加えていきます。また,特定の漢字の例外については,③の例外「王」, ④の例外「火」といったように,説明を加えていきます。このように,学習の手引きを通じて筆順の基本的な原則を理解させ,文字や漢字の正しい書き方を身につけることができると考えていました。但し,この指導では教師の根気強さが何より重要になります。

 そこで,文部省の「筆順指導の手引き」を参考にし,学年に応じて「筆順の意義」を教えていきました。子どもたちは,正しい筆順で書くと,「漢字の成り立ちが分かる」「字が丁寧に書ける」「字が書きやすくなる」などの利点を手引きに書き込んでいきました。このやり方を根気強く取り組んでいくと、新出漢字が出てくると,子どもたち自身が以前記入した学習の手引きをめくり,筆順の決まりを確認するようになりました。

読み取りを深める一人調べとグループ活動の充実 

 国語の指導が苦手だった私は,隣の学級の県下でも作文指導が有名な先生に,教えを乞いました。その先生の授業を参観したところ,子どもたちが今にも踊り出す勢いで発言しながら授業に集中しているのです。そしてチャイムが鳴り,「それでは授業を終わります」というところで,子どもたちが「先生,授業をやめないで…,続けて」と授業を求める光景に驚きました。自分の授業との大きな違いに衝撃を受け,自分の授業を一つ一つ検証することにしました。

 最初に取り組んだのは「板書」でした。私は先生に,「物語」の授業だけでいいので,板書を消さないで欲しいと頼み,休み時間に板書を写しに行きました。すると子どもたちから,「何でそんなことをするの?」と聞いてくるのです。まわりの子が,「新米先生だからだよ」と言っていたので,「そうだよ」と素直に答えました。

 その後,自分でも教材研究をし,同じ構造の板書で授業を行いました。「めあて」「一人調べ」「グループ活動」「動作化」「全体調べ」「まとめと次時予告」などの一連の指導過程を取り入れました。しかし,それでも子どもたちは従来通りの反応で,同じような状況が繰り返されたのです。

授業の鉄則「三人寄れば文殊の知恵」

 後日,その先生に授業を見てもらったところ,「まず子どもたちは毎時間の授業を理解したい,そしてたくさん発表したいと思っているのです。」と言われました。続けて,今日のグループ活動では子どもたちが学習の仕方を理解していなかったため,一人一人が自分なりの考えを持てなかったのです。「三人寄れば文殊の知恵」という言葉がありますが,今日のグループ活動は「三人寄ればリーダーの知恵」になっていました。まず,子どもたちに考えを持たせるために「一人調べ」の段階から鍛えていく必要があることを指摘されました。

 そして,何か一つ「指導方法の理論」を持ちなさいと助言をいただいたので,蓑手重則先生や輿水実(こしみずみのる)先生の「国語科の学習指導過程~基礎・基本」など指導方法の文献を買いあさりました。そこから2年かけて,子どもたち自ら作り出す「学習の手引き」を作りました。国語科だけの研究でしたが,他の教科にも通じる内容で,その後の私自身の教科指導の自信にもなりました。

 授業を成立させる上で大切なことは,子どもたちが一人調べやグループ活動等の各段階で,課題に対して自らの考え方に気づくこと,友だちと話し合うことで一人一人の学びを高めていくことだと考えました。そのために,一人調べの方法や班活動の在り方などを子どもたちに分かりやすく定着させるように実践していかなければなりません。先輩教師がヒントをくださった「寄らば文殊の知恵」になるような学習活動を追求していく必要があるのです。更に数年かかった研究を経て,ようやく子どもたちが楽しそうに授業に臨むことが出来るようになりました。

 担任時代のこのような経験から,国東半島の文殊仙寺は是非訪れてみたい寺院でしたが,時間的な余裕がなく参拝することが出来ずにいました。

文殊菩薩発祥の文殊仙寺

 文殊仙寺への訪問が,定年になってようやく実現しました。「寄れば文殊の知恵」とは,「凡人でも三人集まって相談すれば,文殊菩薩に劣らぬほど優れた知恵が得られるものだ」と,知恵を絞って話し合うことが大切であるという意味です。

 境内に掲げられた寺院由来書によれば,大分県国東半島の文珠山麓に位置する峨眉山文殊仙寺は,日本三文殊の一つとされ,天台宗の寺院です。開基は大化4年(648年)で,役行者(えんのぎょうしゃ)とされています。本尊は文殊菩薩であり,1300年以上の歴史を有している由緒ある寺院です。文殊菩薩は,お釈迦様の弟子であり,「知恵第一の仏」として,学業の成功や合格祈願にご利益があるとされています。

 先代院主(現在の院主の父)とお話をする機会があり、寺院の由来や現状を伺うことができました。そして長い歴史で文殊仙寺の院主が親子で受け継いだのは初めてだとお聞きしました。

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