異論・反論~議論・討論①「将来何になるの?公務いーん」

 本年度,全国の教職員採用試験の倍率が過去最低を記録し教職離れが加速しているとの報道が相次いでいます。また,教員の精神疾患による休職者数も過去最多を更新しており,深刻な状況が浮き彫りとなっています。鹿児島県をはじめ九州各県の採用試験の倍率も,もはや競争試験にならない状態が続いています。

「将来何になるの?公務いーん」専門学校のCM

 教員のブラック問題が浮き彫りになって以来,何の抜本的な対策を講じられなかった文科省がようやく重い腰を上げました。また,マスコミもこれまで「教員叩き」は視聴率を稼げることや教員が反論できないことから教職員の不祥事ばかり流し続けていました。近年教職員たちがSNS等で保護者からの圧力(モンスターペアレント対策)や子どもたちの実態などを発信し多くの国民の知る所になると,少しずつ学校現場の問題や実態を取り上げるようになりましたが,既に手遅れの感は否めません。そのつけが,最終的に家庭や子どもたちに大きくのしかかってくるのです。

 10年程前が最も酷く,全国隅々から集められた教員の不祥事が毎日のように繰り返し報道されていました。当時のネットニュースのコメント欄で,新採の女性教員が「自分が教員であることが恥ずかしく,一部の知人にはそのことを隠している」と書き込まれていたのを見て,大きなショックを受けた記憶があります。不祥事を報道すること自体は当然のことですが,警察や一部官僚,芸能人さらにはマスコミ自身の不祥事に対する報道内容や量に大きな差があったのは,今でも疑問に感じています。このような状況がブラック問題以上に教職のイメージを悪化させ,教員希望者の減少を招いた一因であると指摘されています。

民間企業の少ない鹿児島県の現状

 私たちが若い頃,企業は終身雇用を前提としており,働く意義は現在とは大きく異なっていました。私は教員になる前,約5年間民間企業で働いていました。当時はまだ景気も良く,企業のために献身的に働くことが美徳とされている時代でした。その後のバブル崩壊後に,終身雇用が徐々に崩れ,即戦力が求められるようになりました。そして経験者が重宝されるようになりましたが,当時はまだ十分に理解されていなかったように思います。いずれにしても県内の民間企業は厳しい時代になっていきました。

 教職員採用試験の二次面接で,試験官からの最後に「それで,教員になったら今度はいつ辞めるの?」と質問され,大変困惑したのを覚えています。この質問が私の柔軟な対応力を試すものだったのか,それともいわゆる圧迫面接だったのかは分かりません。当時,私は企業に勤めながら通信教育で教職単位を取得しながら採用試験を受けていました。当時は一度会社を辞めたり再就職したりする人には「仕事が続かないどこか人間的に欠陥がある」という考え方が根強く残っていたようです。この質問が県教職委員会の面接官から発せられたことには,今でも強い驚きを感じています。

 鹿児島では,CMでも知られるように民間企業が少なく,公務員志向の若者が特に多い地域です。このような背景もあり,当時の社会では「一つの職場に長く勤めること」が理想とされていたのかもしれません。

 現在,教員の労働環境が「ブラック」とされる中,教員志望者の数が激減していると言われています。その影響もあり,財務省は「働き方改革」を条件として,教職調整額を現行の4%から10%へ段階的に引き上げる案をようやく検討し始めました。しかし,残業手当が支払われていない現状については,「教職調整額の4%を支給(一日に15分程度残業手当に該当)しているから問題ない」との主張が長らく続き,実質的な改善が進まない状況が続いていたのです。

 民間企業の多い熊本県では,追加募集を行っても欠員が埋まらず,状況は悪化の一途をたどっています。全国的にも小学校の教員採用試験の倍率はわずかに1倍を超える程度で,「選考試験」とは到底呼べない状態です。対策が講じられたもののすでに手遅れで,採用予定人数を下回る事態が続き,教員未配置の学校が増え続けています。「学校の働き方改革」という言葉も,現実味に乏しく,若い世代の共感を得られていません。

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