平成8年,恋之原の稲荷神社の近くの稲荷原遺跡から縄文時代早期の赤色顔料で色づけされた土器3点が見つかりました。調査では,5基の土坑(掘られた穴の跡)や縄文時代早期(約9千年~1万年前)の土器片や石器,縄文時代晩期(約3千年前)の土器などが発見されました。
特に注目を集めたのが,赤い塗料で塗られていた土器でした。この時代に色の付いた土器は全国でも例がなく,国内で最も古い物の一つであることが分かりました。特別な儀式や祭りなどに使われていた可能性も考えられるそうです。恋之原に約1万年前から3千年前頃まで人が住んで狩りをしたり,下谷口川の水を使ったりして生活していたことが分かったのです。また,恋之原に住んでいた縄文の人々が集い,神に祈る祭りをしていたかもしれません。
・ 稲荷原遺跡出土塗彩土器(内側)
稲荷原遺跡の発掘調査は平成8年11月~平成9年3月まで行われました。遺跡の主な遺構は穴を掘った土坑で,縄文土器や石斧,石クワ,磨石(縄文時代、クリ・ドングリなどの堅果類をすりつぶし 、粉をひくため石器),石皿などが発掘されました。
ところで,遺跡があった年代はどうして分かるのでしょうか。鹿児島には桜島をはじめ多くの 火山があり,アカホヤ火山灰層やサツマ火山灰層,シラス層などがあります。その火山灰を調べることで時代が分かります。遺構はサツマ火山灰層の上の層で,土坑や出土遺物1877点が見つかりました。出土土器などから日本の縄文文化の中でもかなり進んでいた文化があったことが分かりました。