今朝の朝ドラ「あんぱん」では,朝田のぶが新聞社の編集局員として新たな一歩を踏み出す戦後の姿が描かれていました。ここ数回の放送では,戦時中のシーンが続いており,これまでの朝ドラと同様に,軍部の独走や反戦のメッセージが主な描き方になっているような感じがしました。戦後80年という節目にあたり,8月の終戦記念日近くまではこうした描き方が続くのだろうと思っていました。今朝の放送では,戦後の日常が戻りつつある中で逞しく生き抜こうとする姿が描かれていて,少し安心いたしました。

・夫婦で見に行った10年前の宮崎市「アンパンマンショー」
わが家のアンパンマン
アンパンマンは,ちょうど我が家の子育てと重なり,アンパンマンやドキンちゃん,ばいきんまんなど一つ一つのキャラクターに色々な思い出あります。
二人の子どもの子育てを助けてくれた作品であり,その時代を思い出してくれる「我が家の一コマ」でもあるのです。その作品が単に戦争に関わるテーマを中心に描かれ,朝から暴力や残酷なシーンを見せられるのは残念だと感じていました。
子どもと一緒にテレビを観ていた時,まずキャラクターの多さに感心しました。毎回,「ばいきんまん」や「ドキンちゃん」が引き起こす事件の中で,実に多くのキャラクターが登場し,飽きることがないのです。昔話や童話にもつながり,大人でも十分に楽しめる作品だと思っています。

長女が2歳の頃,東京の大学でスクーリング研修に行った際,子どもへのお土産に「マイクの付いたアンパンマンのおしゃべり人形」を買って帰りました。長女の前で「お父さんの言うことをしっかり聞いて,お手伝いをしてね」と人形を通して話したところ,長女は正座してまっすぐ人形を見つめ,「はい」と返事をして本当にお手伝いをしてくれました。
調子に乗って「お父さんの肩をたたいて」「ビールを持ってきて」など,何度もお願いしたこともあります。また,「べろべろまん」や「かびるんるん」などが登場する場面では,私がふざけすぎて,子どもたちが泣き出してしまうこともありました。
敗戦国の立場
話を戻すと,日本は敗戦国という立場から,戦争に至った当時の複雑な背景や因果関係を掘り下げるよりも,軍部の暴走,日本人特有の宗教観や集団心理に焦点を当てる作品が多く見受けられます。あと何十年このような描かれ方が続いていくのでしょうか。
これまで起った歴史上の戦争において民衆心理や国家,軍部がどのように動くかという点は,国や時代が異なっても同じようになり大きくは変わらないはずです。歴史と同じように,戦争も勝利国の立場でしか語られることがなければ,真実を見失い,全体として偏っている思うことが多いはずです。
新しい時代の発信力
戦争を正当化しては絶対にいけませんが,歴史が物語るように宗教や国境問題など残念ながら戦争でしか解決できないこともあったようです。実際,戦後の世界を見渡せば,白人による植民地支配は次々と姿を消していきました。もし戦争を語る際に,一方の価値観だけを基準として論じてしまうならば,私たちは同じ過ちを繰り返す危険性があるのではないでしょうか。
最近の出来事を振り返っても,アメリカによるイランの核施設攻撃,その後アメリカの大統領が「広島や長崎の原爆投下で戦争は終結した」と発言したことに対し,日本の総理大臣や政府高官が即座に反論できない姿勢には,虚しさを感じずにはいられませんでした。ネットニュースでこのことを知り,直ぐにテレビをつけてニュースが流れるのを待っていました。しばらく経ってから,番組内でわずかに異論を唱えた程度で,アメリカに対して強い反論や発信がなされなかったことも,大変残念に思いました。もしトランプ関税で波風を立てたくないとの思いが政治家にあったなら,日本側に不利な関係は永遠に続いていくのでしょう。主権国家として,関税と原爆発言はまったく関係ないのです。それすら言えない日米関係に,一体どんな未来があるのでしょうか。
正直,こうした発言は,トランプ大統領であれば言いかねないと多くの人が予想できたと思われます。だからこそ,日本の報道機関(特に瞬時に対応できるテレビ局)は,国益を守る大きな役割から予め予測できることには備えをして欲しいのです。そして政治家が言えないのなら,報道機関として自らの言葉で,即座に世界へ向けて発信して欲しかったと思っています。何時間もかけ,いちいち広島市長や長崎市長のインタビューを取る必要はありません。広島や長崎ひいては国民の思いは変わっていないのです。
世界各国の報道機関は,自社の責任でまず即座に発信する或いは即応する体制を整えています。それに比べて,日本のマスコミは一斉に(即座に)個人の揚げ足とりばかり,タレントに言わせ責任を取らず,どうしても内向きな対応しか出来ないようです。このような時だけ「放送法があるから」と言いわけする姿勢が,正に今のテレビ局の不祥事に現れていると思います。

現在,アンパンマンをはじめ日本のアニメや文化は世界中の人々に受け入れられています。日本の発言力や取り巻く環境は40年前とは大きく変わっているのです。戦後80年が経った今こそ,私たちは過去と向き合い,未来への新しい発信力を養うべきではないでしょうか。