校長室に保管されている貴重な資料(その1)

新しい時代の情報公開を

 戦後80年を経て,私たちは新しい年を迎えました。昨年までの議論を振り返ると,オールドメディアによる同じ論点の繰り返しが目立っていたように思われます。

 しかし今後は,それにとどまらず新たな事実に基づく多様な意見が,より活発に交わされることを期待したいところです。もっとも,意見は立場や価値観によって受け止め方が異なり,すべての人に受け入れられるものでもありません。意見の対立や違和感が生じること自体は,民主社会においてごく自然なことなのです。

 現在,日本を取り巻く外交や安全保障の環境は大きく変化しており,私たちは新たな時代の入り口に立っています。だからこそ,従来の枠組みや考え方にのみ依拠するのではなく,多方面の視点を取り入れた議論が求められるはずです。戦争に至った経緯や,そこから積み重ねられてきた反省を踏まえ,これまで形成されてきた価値観や前提を見直す姿勢が求められているのではないでしょうか。そのためにも,テレビ報道においては「放送法の原則」に立ち返り,異なる立場の意見を併せて示すことが重要です。国民一人一人が自ら考え,判断できる社会こそが,民主国家の基盤であると思います。

校長室の金庫

 さて,学校の校長室にある金庫には,さまざまな重要書類が保管されています。私がかつて勤務した学校でも,指導要録の写しをはじめ,入学・卒業などの学籍に関する記録,国の法令で定められた文書や,県の条例に基づく「学校備付表簿」など,多岐にわたる資料が収められていました。こうした記録は,学校が公的機関として果たしている役割があるからです。

 かつて北薩地方に勤務していた頃,自分が在籍していた時代の指導要録を見せてほしい,という連絡を受けたことがありました。理由を尋ねると,「水俣病に関する一連の裁判資料として必要だ」ということでした。私は「保管年数を過ぎていますので,確認させてください」と伝え,いったん電話を切りました。

 その後,教育委員会に問い合わせたところ,「なぜ保管期間を過ぎた文書をまだ破棄していないのですか。すぐに破棄してください。」との指示を受けました。当時,確かに保管期間の定めはあり,「必ず破棄しなければならない」と法的に明確に定められていた記憶はありませんでした。また期間後に公開しないことは当然でしたが,警察署から要請で特別に公開したこともありました。

個人情報保護と情報公開

 しかし,その後,個人情報の取り扱いは一段と厳しくなりました。近年では,パソコンの盗難やウイルス感染,不正アクセスなどによる個人情報の漏洩が相次ぎ,大きな社会問題となっています。学校の成績や人物評価のように,特定の個人の属性や事実を示し,氏名などと照合することで容易に個人を特定できる情報は,すべて個人情報に該当します。この点については,異論の余地はないでしょう。

 一方で,個人情報の漏洩は不祥事であり,当然,厳しく責任が問われるべき問題です。しかし,そのことと,学校に保管されているすべての記録を「何でもかんでも個人情報」として扱うこととは,分けて考える必要があるように思われます。学校は税金によって運営される公的機関です。諸外国では,個人の利害関係が解消されると考えられる「30年」を一つの目安として,公文書を公開する制度が整えられています。

コロナ禍の多額の支出の検証

 例えば,コロナ禍における医師会への多額の支出や,Go To事業などの補助金については,将来必ず検証されなければなりません。仮に物凄い税金が投入された補助金の使途までも同じ流れで保管期間が決められ破棄されるのなら,現行の法律が,官僚や行政,一部企業に都合のよい仕組みになっているのではないかと感じるからです。コロナ化禍での助成金の不正受給事案は発覚していないケースがまだまだ多いそうですが,雇調金等は支給決定から5年間で時効が成立しているそうです。制度を悪用した不正受給には,引き続き厳しい姿勢で時効成立を許さない対応が求められるのではないでしょうか。

 アメリカでは,戦争や国際政治の駆け引きが数多く行われてきましたが,公文書は作成後30年を経過すると原則公開されます。

 もしかすると,広島への原爆投下が決定されるまでの大統領周辺の具体的なやり取りなども明らかになり,戦争に至った歴史の正当性が検証可能となってくるかもしれません。それに対し日本では,「個人情報保護」を理由に,国民が納得できる形とは言い難いまま,省庁の文書が破棄されている可能性が残っています。公的記録をどのように残し,いつ,誰のために公開するのか。その在り方について,今こそ改めて考える必要があるのではないでしょうか。

学校備付表簿とは

【1】 学校教育法施行規則第15条学校備付表簿

 前項の表簿は,別に定めるもののほか,5年間保存しなければならない。ただし,指導要録及びその写しのうち入学,卒業等の学籍に関する記録については,その保存期間は,20年間とする。

 第二十八条 学校において備えなければならない表簿は,概ね次のとおりとする。
一 学校に関係のある法令
二 学則,日課表,教科用図書配当表,学校医執務記録簿,学校歯科医執務記録簿,学校薬剤師執務記録簿及び学校日誌
三  職員の名簿,履歴書,出勤簿並びに担任学級,担任の教科又は科目及び時間表
四  指導要録,その写し及び抄本並びに出席簿及び健康診断に関する表簿
五 入学者の選抜及び成績考査に関する表簿
六 資産原簿,出納簿及び経費の予算決算についての帳簿並びに図書機械器具,標本,模型等の教具の目録
七  往復文書処理簿

【2】 鹿児島県立学校管理規則(備付表簿)

第34条 学校において備えなければならない表簿は,別に規定する他,次のとおりとする。
(1)学校沿革誌 (2)卒業証書授与台帳 (3)旧職員履歴書綴     …   【永年保管
(4)転退学者名簿 (5)辞令交付簿 (6)公文書綴 (7)統計資料綴 (8)諸願書,届書綴
(9)旅行命令簿 (10)給与簿 (11)勤務関係承認簿 (12)当直日誌  …   【5年間 保管
(13)学校要覧 (14)その他校長が必要と認める表簿         …   【1年間保管
2 前項の表簿中第1号から第3号までは永年,第4号から第12号までは5年間,第13号は1年間保存しなければならない。

※ 法(国)と条例(県)で保管し合っています。

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