鹿児島県の海岸線と県境

 鹿児島県の海岸線の長さは,全国で3位の2,643キロメートルにも及びます。これは想像以上の長さかもしれませんが,他の県と比較すると砂浜や磯浜が多いのが際立ちます。全国1位は当然北海道(4461㎞)ですが,2位の長崎県(4183㎞)の海岸線は3位鹿児島県(2643㎞)の1.57倍もの長さがあります。これは,長崎県に対馬や五島など島が多く,海岸線が複雑に入り組んでいる半島地形を持つためです。海岸線の長さを実感するのは難しいかもしれませんが,かつての伊能測量隊が測った近くの海岸線を歩いてみると,その壮大さが少しは理解できるかもしれません。

伊能隊の長島測量

 伊能隊は1810年9月4日から9月17日にかけて,長島を一周する約118キロメートル(28里65町)を14日間で測量(獅子島3日を含む)しています。幾つかの区間,船を使っての測量も行っていますが,海流が速く1日あたり約5~6キロの距離しか測れませんでした。この後,支隊と合流し獅子島では3日かけ本県の第7次測量を終えています。伊能隊にしては比較的ゆっくりした測量であったのは,本隊単独の測量で,次の天草地方での日程の都合があったためです。

 実際に夫婦で長島町の海岸線踏破にチャレンジしてみましたが,海岸線を歩けない断崖絶壁では近くの国道を歩くのんびり旅でしたが,実質三か月以上かかりました。海岸線とは果てしなく長いものでありながら,人々にとって身近な風景でもあるのだと感じます。そして,どの海岸線にも必ず小学校区が存在し,地域の人々の生活が根付いているのです。

鹿児島県の陸地の県境(192㎞)

 鹿児島県の陸地部分の県境は,宮崎県と熊本県に接しています。市町村ごとの接している距離を見ていくと,具体的には以下のようになります。(国土地理院地図のツールで計測)

①志布志市(串間市と都城市)の県境の長さは26.81キロ

②曽於市(都城市)は55.57キロ

③霧島市(都城市,小林市,高原町)は28.83キロ

④湧水町(えびの市)は20.45キロ

⑤伊佐市(えびの市・人吉市・球磨郡球磨村・水俣市)は43.73キロ

⑥出水市(水俣市)は16.32キロ

 これらを合わせると,鹿児島県は宮崎県と熊本県の合計8市町村と接しており,その陸地部分の県境の総距離は約192キロになります。

※ 宮崎との県境は「7月5号」で紹介されているように,御鉢(えびの高原の噴火口跡)近くは下図のように特異な形で数十メートルの部分が宮崎県の高原町に接しています。なお高原町は,かつて薩摩の役人が喉から手が出るほど欲しかった「高千穂峰」と「天ノ逆鉾」,「御鉢」まで手に入れた形になっています。この県境にいびつな触手を伸ばしてまで手に入れたかった高千穂峰,その手前で何故か事切れました。(都城島津家の力技か…)

 これにより,鹿児島県の海岸線の長さ2,643キロと比較すると,陸地部分の県境もかなりの距離であることがわかります。鹿児島県の境界の長さは2,835キロになります。

 県のホームページによると,鹿児島県の海岸線の長さは2,643キロあります。ここに先の県境と合わせると2,643キロ(海岸線)+192キロ(県境)=2,835キロ 鹿児島県の境界の長さは2,835キロになります。 

同じ長さの図形で面積が一番大きいのが円

※ ここで,算数の問題です。ある線の長さで面積が一番大きくなる図形は何でしょう。

・ 公式による図形の計算

 一辺が10mの正方形の面積は,10m×10m=100㎡です。4辺の長さは40mになります。
 円周40mの円の面積の求め方は,(半径)×(半径)×3.14の公式で求められます。円周は直径(X)×3.14なので,(X)×3.14=40m 
 ∴ 直径(X)=40÷3.14≒12.74 半径は,直径÷2で6.37m
 この円の面積は,6.37×6.37×3.14≒127.4㎡となります。つまり正方形の面積100㎡より円の面積127.4㎡の方が大きくなります。答えは円の面積が一番大きいです。
 ここで,鹿児島県の長い海岸線2,835キロの長さで円を作るとしたら,先の考え方で式を立てると,まず直径は円周2,835キロ÷3.14で約903キロになり,半径は約452キロになります。円の面積は,452×452×3.14≒641,515㎢となります。
 これは,日本の面積377,915㎢の約1.7倍に相当します。海岸線が長いと言うことは美しい景色が広がり広大な観光地が出来ます。それと同時に有事の際には守備範囲が広がります。

海洋資源と防衛の両面

 鹿児島県の海岸線の長さを基にした面積の計算は,地域の広さを視覚的に実感するための考え方です。実際に砂浜を歩いてみると,数字ではなく肌で感じる広大さが伝わってきます。その感覚を数学的に捉え,地理的な理解を深めて欲しいと思います。

 本県は,その地理的な特徴から観光資源としてのか潜在力が非常に高く,太平洋と東シナ海に囲まれた本土最南端という位置は,絶景を楽しめるスポットや豊かな自然環境を持つ地域としての魅力を際立たせています。しかし,海岸線は,観光資源としての可能性と同時に,防衛や環境管理の複雑さも増していきます。拉致事件が発生した吹上浜は,県民にとって大変身近な観光地なのです。(長崎・鹿児島・沖縄の三県は中国・韓国と国境を接し,全国の海岸線の25%に当たります。国防の観点からも非常に重要で,領海侵犯のほとんどがこの地域で発生しています。)

 長い海岸線は,環境や社会的な影響にも大きな意味を持ちます。例えば,海岸線に沿った生態系は,海洋生物の多様性を支える重要なエリアとなり得ます。また,観光開発が進むにつれて,自然環境とのバランスをどう保つかが課題となります。これらの側面を考慮すると,海洋資源としての海岸線の長さが持つ意味は非常に奥深いものです。このように,地理的な情報だけでなく,その背後にある環境的・社会的な要因まで含めて考えると,鹿児島県の魅力や課題がよく見えてきます。

 

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