先日,串木野近くをドライブしていると,ラジオから「H3」4号機ロケットの打ち上げ中継が流れてきました。急いで南側の海が見える照島神社へ向かい,スマホでライブ中継を見ながら発射を待ちました。駐車場に着いて少しすると,南東の空にロケット雲が見えました。その後,驪龍巖の海岸から見上げると,上空の風に流されて龍のような形になっていました。
現在では,ロケット打ち上げの見学のために県外から多くの方が種子島を訪れています。今から30年ほど前,私が種子島で勤務していた頃は,県外からの見学者も少なく,見学場所もそれほど混雑していなかったように思います。よく訪れた場所の一つが「宇宙ヶ丘公園」で,発射台まで直線で6キロほどしかなく,打ち上げ時の爆音と閃光は圧倒的な迫力でした。
内之浦宇宙空間観測所
中学生時代,日本初の人工衛星「おおすみ」の打ち上げを学校で見ました。教室のテレビで打ち上げの様子が内之浦から中継され,発射と同時に全員で校庭に飛び出して空を見上げました。担任の先生がここからもロケット雲が見えるよと言っていたからです。しばらくすると,桜島の南側の方角にロケット雲が現れ,学校中が歓喜に包まれました。あの時の感動は,今でも鮮明に覚えています。
種子島宇宙センター
教員になってからは,打ち上げがある際には子どもたちによく見せていました。鹿児島県内の本土であれば,天気の条件さえあえば,多くの地域で見ることができるからです。まず,鹿児島県の地図を広げ,どの方角に現れるかを考えさせます。そして,地球が丸いことを踏まえて,何秒後にロケット雲が見えるか予想させるのです。高学年になると,水平線までの測り方や地図上の直線距離等を教えると,ある程度の予想ができるようになります。ちなみに照島から種子島ロケット基地までの直線距離は161キロです。
当ブログ「桜島が見える範囲」(12月7日号)を基に算出した韓国岳の見える距離(147.159Km)とロケット雲が見える高さ(X)の比例式を用いて計算すると,韓国岳の高さ(1.7km)とその見える距離から,ロケット雲が照島から見えるための高さを求めることができます。式は以下のようになります。
1.7km : 147.159 km = X(ロケット雲の見える高さ): 161km(照島からロケット基地までの距離)。この計算から,X = (1.7km × 161km) ÷ 147.159 km ≒1.86km となり,ロケットが約1,859mの高さに達すると照島から見えることになります。
また、H3ロケットの上昇速度が分かりませんが,打ち上げライブを見ると,メインエンジン噴射から約20秒後に雲に隠れました。その前には1,859mには達していると思われます。あくまで推測ではありますが,約15秒前後で1,859mの高さに達し照島からロケット雲が見える計算になると考えられます。
このように,子どもたちにとって「身近なこと・関心のあること」を基に教材化を図ることで科学的な思考力を培うことができると考えています。
・照島~ロケット基地迄の距離は,直線で161キロ
また,地図を確認することで,「あの下が種子島か」と鹿児島県の広さを実感できる良い学習機会にもなります。さらに,どこからロケット雲が現れるか,何秒後に見えるかなど予想させることで,科学や地理への理解が深まります。地域によっては,音は聞こえなくても,遠くの山の上に赤く小さなロケットとロケット雲を見ることができ,子どもたちはその光景に感動するのです。