103万円の壁(扶養控除適応)とその計算方法

 最近,テレビで「103万円」や「178万円」といった数字が話題になっています。子どもが学生だった頃,扶養控除の適用を受けるため,アルバイト収入の見込み額を直近3カ月の平均で計算し,毎年提出していました。当時は,103万円を超えるかどうかで扶養控除が適用されなくなる可能性に,毎年ハラハラしていたことを思い出します。

 その頃の親たちは,自分たちの生活を切り詰め,家のローンを抱えながらも,子どもたちに仕送りを続けていました。現在では,教育の無償化や各種制度の見直しが進み,若い世代にとって大きく環境が改善されています。しかし一方で,30代以上の世代は依然として教育ローンの返済に苦しみ,これらの恩恵を受けることもできていません。

受益者負担の原則

 受益者負担の原則を考えれば,すべてを無償化するのではなく,全体的に手厚く支援する政策が求められるのではないでしょうか。具体的には「補助金」ではなく「減税」を通じた支援が望ましいと切に願っています。

 これまでニュースで一部の弁護士たちが元総理の国葬や議員定数の違憲性を訴えてきたことを知りましたが,国民全体に関わるこの「103万円の壁」問題をなぜ「憲法違反」として訴えなかったのでしょうか。マスコミもまた,本来の役割を果たさず,この問題を30年近く放置し,官僚の言いなりになっていたと言わざるを得ません。「官僚・政治家・マスコミ」がグルになって黙認してきた,と批判されても仕方ありません。

SNSで広がった議論

 例えば,兵庫県知事の問題をあれほどエネルギッシュに報じたように,この問題も積極的に取り上げていれば,もっと早く解決していたのではないでしょうか。ここでも力を発揮したのがSNSでした。何年も前からネット社会の中で具体的に専門家たちの議論が交わされ,社会運動へと広がっていった結果,今回の選挙でようやく様子見をしていた政治家たちが動き始めたのです。(勿論自民党の過半数割れも大きな要因ですが…)。最近になってテレビでもこの問題が報じられるようになりましたが,ネット社会の動きに「相乗りしたキセル乗車」とすら思えるのです。

 

103万の計算方法

 「103万円」や「178万円」という数字は,最低賃金と勤務条件を基に算出されています。労働基準法上,1日の勤務時間を7時間,月の勤務日数を20日と仮定すると,30年前の最低賃金611円で計算した場合,611円×7時間×20日×12カ月=1,026,480円となり,約103万円となります。

 一方,現在の最低賃金は1,055円です。同じ条件で計算すると,1,055円×7時間×20日×12カ月=1,772,400円となり,約178万円になります。この差額75万円分の憲法違反状態が続いていると言えるのです。

 そもそも「103万円の壁」は,憲法第25条「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」に基づく最低賃金によって制度化されています。しかし,この制度の基準額は30年前,平成7年の全国平均最低賃金611円を基に算出されたものです。物価や賃金が大きく変動した現在においても,古い基準が放置され続けているのは,社会的な課題と言えるでしょう。

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