これからの日本のエネルギー政策(その2)

 前回の投稿の続きです。高市総理はまた,日本のエネルギー自給率を引き上げる強い決意を示すとともに,「これ以上,美しい国土を外国製(中国製)の太陽光パネルで覆い尽くすことには断固反対である」と明言しました。

 そして,耐用年数を迎える初期型の大型太陽光パネルの安全な廃棄問題にも触れ,現行政策の課題を的確に指摘していました。高市内閣の誕生により,日本のエネルギー政策は大きな転換期を迎えることになると感じます。

 近年,鹿児島県内では風力発電や太陽光パネルの設置が急速に増え,自然破壊が進んでいます。この現状を見ると,もはや看過できない深刻な地域問題であると強く感じます。

・撤去された牟礼岡の風力発電所

 日本は「温室効果ガス削減」という数値目標にとらわれ,結果として日本だけがEUや中国の思惑に沿うような政策運営を行っているように見受けられます。実態は温暖化対策やSDGs(持続可能な開発目標)の理念と同じ推進派の隠れ蓑なのです。

 その結果,鹿児島県だけを見ても,太陽光発電施設の乱立により,森林伐採や土砂流出といった環境破壊が進み,地域の自然や住民の生活環境が脅かされています。「地球のために日本がやらなきゃ誰がやる」と主張する前に,最低限,言い出しっぺのヨーロッパには「一緒に出来ないのなら日本もNO」と,言ってからにしてください。 

・牟礼岡の風力発電所

奄振をはじめ補助金頼みの鹿児島県

 このような本県の経済的背景には,土木・建設業を支援するための補助金頼みの体質,いわば公共事業への過度な依存があります。経済的支援が目的化し,環境保全の視点が後回しになっているのです。さらに,中国資本を含む外部資金が地方に流入し,官僚・議員・企業の三者による癒着構造が形成されつつある点も懸念されます。

 かつて,奄美振興交付金(奄振)によって港湾や空港の整備が進められ,奄美の人々の生活は確かに向上しました。しかし,その一方で,これらの事業には高度な技術が求められたため,地元企業は大手ゼネコンの下請けとしてわずかに関わる程度であったと報道されました。その結果として,莫大な補助金は「地域振興」や「開発」という名のもとに投じられながらも,その実態は鹿児島の豊かな自然を破壊し,地元経済への恩恵はごくわずかだったのです。

 今,県内各地に乱立する風力発電やソーラーパネル,エネルギー関連施設を見ると,当時の奄振事業を思い起こさずにはいられません。外から持ち込まれる「開発」は,しばしば地域の未来を照らすどころか,地元の人たちから豊かな自然との調和や関わりを奪っているのではないでしょうか。

 福島原発事故は結果的に東京都民の電力を賄うために,福島の人々から美しい故郷を奪ったのです。「誰のための開発なのか,誰のための補助金なのか,本当の豊かさとは何なのか」という問いを私たちは真剣に考えなければなりません。 

・4年前のソーラー予定地,雨が降ると麓の川が濁っていたそうです。

 このままの状況を放置すれば,地域の自然と人々の生活は取り返しのつかない形で失われかねません。

累計電力能力と建設費や環境破壊などの費用対効果

 野間岬ウインドパーク発電所は,南さつま市笠沙町の野間岬にあった九州電力の風力発電所で,平成10年3月から平成31年までの21年間稼働していました。入り口には無料の展示施設があり,東シナ海の絶景を楽しめる場所としても親しまれていましたが,現在はすでに撤去されています。

・ 野間岬ウィンドパーク発電所(九州電力)

 こうした大規模な施設には莫大な建設費や維持費が投じられています。それにもかかわらず,稼働期間がわずか20年程度にとどまるのが現実です。再生可能エネルギーとしての意義は理解できますが,平均的な耐用年数や発電効率を踏まえた「費用対効果(コスパ)」を,もっと正確かつ透明に示すべきではないでしょうか。さらに,設置や撤去に伴う自然環境への影響も無視できません。環境保全を掲げるのであれば,自然破壊とのバランスについても丁寧な説明が求められます。私が知る限り7カ所撤去された施設があります。他県ではパネル設置業者が逃げて,そのまま放置している施設もあるそうです。

20年間の固定価格買取制度

 野間岬ウインドパーク発電所が20年で解体されたのに続き,牟礼ヶ岡ウインドファームも2025年2月に運用を停止しました。これは,20年間の固定価格買取制度再生可能エネルギーで発電した電力を一定の価格で買い取る制度)の適用期間が終了したことに加え,設備の老朽化や製造からの経過年数により部品の入手が困難になったためだそうです。

 例えば,家庭用の電化製品でも部品が製造中止となり,修理を諦めて新しく買い替えることがありますが,同様のことがこの巨大な風車でも起きたのです。私が子どもの頃は,電化製品は馴染みの電気屋さんが真空管や部品を交換して安く修理してくれたものです。

 しかし,問題は単なる老朽化ではありません。使用されていた中国製の風車は日本製に比べ耐久性が低く,交換部品も確保できないという欠陥を抱えていました。政府はこの実態を把握しながら導入を推進し,「壊れたら新しく作り替える」という短期的な循環を容認してきたのです。風力発電は家電とは異なり,設置や撤去に莫大な費用がかかるうえ,自然環境への影響も甚大です。

・ 風車を倒して解体する工事

 2025年4月からは解体作業が始まり,9月末には全て撤去されるとのことです。新しい工法によりコストを抑えられるとテレビで報じていましたが,マスコミが本来注目すべきは「なぜこうなったのか」という制度上の問題ではないでしょうか。コマーシャルを提供してもらっているので,それ以上突っ込めないのでしょうね。しかし「壊れていない風車まで,どうして解体するのですか」程度はぜひ報道して欲しかったですね。

 「再生可能エネルギー」という言葉は,聞こえが良いものの,実態は補助金頼みの不安定な仕組みであり,環境破壊を伴う例も少なくありません。その結果,最も利益を得たのは設備を供給した中国であり,日本は税制的にも環境的にも大きな負担を負っています。何より,この補助金制度の裏には国民の莫大な税金が投入されているのです。

 

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