お見合いのお歳暮
わが家では,両親の友人や親戚,さらには教員仲間との付き合いが多く,盆暮れのやり取りに何かと気を遣う家庭でした。加えて,母は結婚相手を紹介するのが好きで,毎年15~20組ほどのお見合い結婚を成立させ,その仲人になっていました。
そのため,結婚が整ったご両家からのお歳暮やお中元が,結婚後3年ほど続き,年賀状のやり取りも含めると,季節ごとの付き合いは想像以上に大変でした。

わが家の床の間には,山形屋のお歳暮が積み上げられていました。父は「必ず半返しをするように」と言っていましたので,返礼の数も多く,なかなか大変だった記憶があります。中でも負担が大きかったのは,お歳暮とお中元です。数が多いため,贈答の準備には相当な手間と時間がかかりました。
結婚後は,ちょうど妻が学生時代にデパートの包装係のアルバイトをしていたこともあり,包装がたいへん上手く,毎年のように母を手伝っていました。
届いたお歳暮は,包装紙と内のしを丁寧に外し,半返しの品に再利用します。見た目にも失礼がないよう,妻の手際の良さが大いに役立っていたようです。とはいえ,品物の費用は抑えられても,送料だけでもかなりの額になります。贈答の付き合いの大変さを,しみじみと実感させられたものです。

転勤の挨拶回り
話は変わりますが,教員には転勤が付き物であり,そこには独特の慣習があります。その代表的なものが「挨拶回り」です。教諭の場合,教育委員会や近隣の小中学校が主な訪問先ですが,管理職になるとその数は一挙に増えます。特に地方の小規模校では,3~40か所に及ぶことも珍しくありません。幼稚園が併設されている学校では,さらに件数が増えることになります。

農協や郵便局,派出所,公民館役員,民生委員,関係団体などへの挨拶はどこの学校でも行っていて理解できます。しかし中には,漁村の網元や山村の林業・農協理事など地元の有力者なども入っていて,引き継ぎの際に挨拶先の一覧だけでなく,「手土産」の品物や金額まで指定されている学校もありました。転出時も同様で,妻の記憶によれば,山形屋の包装紙に包まれた商品を用いて70軒を超える挨拶回りに行ったとのことでした。非常におかしな慣習ですが,学校という閉鎖的な社会では,こうした慣行が残りがちです。学校規模が小さくなると,校区の全戸数を訪問する例も聞いたことがあります。
また教頭職になると,PTA副会長に加え,公民館主事など地域の「充て職」を任されることが多く,地区によっては,その仕事量が本来の教頭職を上回ることもあり,「小さな学校だから楽でしょう」と言われるたびに違和感を覚えました。

教員のブラック問題と宛て職の多さ
ですから,挨拶回りのと共に改善して欲しいことに,学校職員(校長・教頭・教諭)の「宛て職」の多さについて考えて欲しいと思います。

| 私が教頭の「宛て職」として,公民館主事を兼務していたときは,校区の台風被害調査と保険請求や老人クラブの世話,町民体育祭の練習や宴会対応など年間4~50回に及び,経済的負担も数十万円に達しました。当時の役職は30を超えていて是正を求めましたが,「これまでもそうしてきたから」という理由だけで,改善はなされませんでした。その後,私の後任者が体調を崩し,退職するなどの事態を受け現在は仕事内容もかなり改善されたそうです。 学校のブラック問題を語るとき,スポーツ少年団や部活指導の他にこうした「宛て職」が多く,本来の業務に専念できないことも併せて考えて欲しいのです。 教員のブラック問題を語るとき,長時間労働や部活動指導の負担が注目されています。しかしそれと同時に,部活指導に加えて数多くの「宛て職」や雑務を担わされていることも多く,本来果たすべき業務に十分専念できていないという現実にも,目を向けていただきたいのです。 |

教えること,育てることに力を注ぐはずの時間が,業務以外の仕事の比重が大きい状況は,教員個人の努力だけで解決できる問題ではありません。この点を含めてこそ,教員の働き方の在り方を考える議論が,より実りあるものになるのではないでしょうか。
