海岸線から水平線までの距離は約4.5km
(1) 東北大震災において,津波災害の恐ろしさが衝撃的な映像と共に明らかにされました。驚くべきことに,遠くに見える水平線は僅か4.5kmで,しかも津波が飛行機のような速さで押し寄せ,圧倒的な破壊力で迫ってくることが広く知られました。この現象を具体的に理解するために,私立高校で頻繁に出題される有名な問題「海岸線から見える水平線までの距離を求める方法」から考えてみたいと思います。
① この問題は,人間が海岸線から見える水平線の距離(X)は,「三平方の定理」から導かれた公式 X = √(h² + 2 × h × R) で求めることが出来ます。ここで,「X」は水平線までの距離,「h」は観測者の目の高さ,「R」は地球の半径です。この問題を,下の図を用いて少し説明してみたいと思います。
② 水平線の距離(X)の求め方(図解)
※ 数学が苦手な方は,次の「桜島が見える範囲」へ飛ばしてください。
③ 具体的な計算式
県内で桜島が見える範囲
(1) 登山の最大の楽しみは,山頂から広がる素晴らしい景色を眺めることです。霧島や高隈山,開聞岳などの高い山に登ると,桜島が見えます。登山する前に,天気予報を確認してから出発しますが,予報が外れたり,黄砂や降灰などの影響で眺望が楽しめないこともしばしばあります。
桜島が望める範囲は県内のどれくらいなのでしょうか。前述の「水平線までの距離」の計算方法を基に,視界を遮る手前の山の標高は考慮せずに,単に計算上で見える範囲とします。
(2) (X)²+R²=(桜島1000m+R)²の計算式に数字を代入すると,X(桜島が見える範囲)は以下のように求められます。(X)²=1²+2×1×6369.4で, Xは√12739.8となり、112.87㎞になります。
この計算式から,桜島が見える範囲(112.87㎞)は,南は中種子町や三島,北は熊本県の天草・八代地方、宮崎県の高鍋町までの広範囲で桜島が見えることになります。
(3) 同じように,本県本土の最高峰の韓国岳(1,700m)についても考えてみましょう。九州エリアの登山者数ランキングでは,常に上位に登場している人気の山です。
ところで,県の公式ウェブサイトの「韓国岳の地名由来」には「山頂から韓国が見えるという言い伝えが広く信じられています」との記述があり,その高さを誇っています。 しかし、先ほどの計算では,韓国岳の頂上からの眺望は最大で147.159㎞となり,福岡県柳川市,大分県臼杵市,湯布院までの範囲におさまります。(霧島の白鳥山から雲仙普賢岳が見えたのは驚きでした。)
なお,韓国岳からは韓国までの最短距離は釜山が最も近くて390㎞あります。また、韓国最高峰の漢拏山(1,950m)は440キロ離れており、計算上でも実際でも見ることは不可能です。しかし,韓国岳の漢字表記から先の地名由来の韓国説を信じている人も多いようです。因みに、韓国岳の地名由来のこの他の説には,「唐」「空(噴火口)」「国見岳(領内を見渡せる高い山)」「唐国(中国)」など複数あるようです。あくまでも私説ですが,「山頂がえぐられて空になっている国見岳」,「唐の国が見えるほどの高い山(距離的にも,交流的にも,薩摩は常に中国に目が向いていたから)」などは如何でしょうか。
桜島大爆発で津波が到達する速さ
(1) 津波の速さ(秒速)は、一般的に√(9.8×水深m)の計算式で求められるようです。錦江湾の平均水深が117mであることから、錦江湾内では時速120キロ近いスピードで津波が押し寄せることになります。もちろん、水深が浅くなるとスピードも減少しますが、桜島からの距離が約4キロですので、桜島が大爆発した場合、津波は2~3分で市内に到達する計算になります。更に、火砕流に至っては秒速100m(時速360km)という猛スピードで押し寄せるので、桜島が発生源の場合、津波よりも早い40秒後には市内に到達することになります。
(2) 川内原発での火砕流被害に関する話題を報道でよく耳にしますが、一番可能性が高い桜島がその発生源だとすれば、鹿児島市民は火砕流が川内原発に到達する前に,壊滅的な被害を受けることになります。この話題を聞くたびに抵抗を感じるのは、私だけでしょうか。
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