異論・反論~議論・討論⑥「PTA役員選出のエピソードについて」

校長と事務職員の法的根拠は

※ 校長と事務職員の法的根拠

 地方公務員は,勤務時間の内外を問わず職務専念義務が課され,「勤務時間外であっても職務上の注意力のすべをその職責遂行のために用い,なすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない」とされています。平たく言うとPTA業務につく場合でも「疲れ切って翌日の職務に支障がでたらだめですよ」という意味も含まれています。

(1) 職務に専念する義務には,「教職員(教員)は,法律又は条例に特別の定がある場合を除く外,その勤務時間及び職務上の注意力のすべをその職責遂行のために用い,当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。」  
(2) 兼職及び他の事業等の従事「教育公務員(教員及び事務職員)は,教育に関する他の職を兼ね,又は教育に関する他の事業若しくは事務に従事することが本務の遂行に支障がないと教育委員会が認めたら,給与を受けてその職を兼ね,事務に従事することができる。」
(3) 兼職兼業に関する事務取扱規程「公務ではないが,教育に関する公益性が高く,かつ学校教育に有益なものについて,教職員が,団体の職に就き,又は団体の業務もしくは団体の主催する業務を行う場合のうち,勤務時間外(報酬を得る)又は勤務時間内(報酬を得ないもの)とします。」
 なお,団体とは,学校関係団体「PTA・同窓会・後援会等」,教育に関する公益財団法又は公益社団法人,教育に関係している非営利型法人を指します。 承認・許可できるものは,①「公務の遂行に支障がない」ことや②「信用失墜行為がない」,③「その報酬が社会通念上妥当な額である」ことなどが記されています。

 学校長は法的には教員ではありません。(民間人は校長には就けますが,教頭職にはなれません。)通常PTAのメンバーには入れませんので顧問という形で参加します。校長がPTAの顧問,教頭が副会長,学年主任が学年顧問を務める他,教員の中から選ばれるPTA係や,主に事務職員が担当するPTA会計係も配置されています。さらに,学級PTAの顧問には学級担任が就き,PTA専門部まで含めると,ほぼすべての職員が何らかの形でPTA活動に関与しています。しかし教員の場合は問題ないのですが,事務職員は教員ではないのです。多くの学校でPTA会計という結構忙しい役が与えられています。

 「事務職員も同じ学校の先生だからいいじゃないの」と言われと思いますが,公立学校として法を守ることが求められるのです。昭和時代まではこうした体制に特段の問題はなかったように思います。しかし,平成に入ると県内のいくつかの学校で,事務職員が「PTA会計は職務外である」として引き受けないケースが現れました。この動きには驚きましたが,法的には間違っていないことも理解できます。 30年ほど前から,事務職員のPTA会計は,いずれは問題になるだろうと言われていましたが,学校の先生たちが「聖職・公僕」で済まされない権利を主張できる時代になったと思うと,教頭として少なからず不思議な感覚があったことを覚えています。

 現在では,PTAに関する諸問題について,ネット等で法的な規定や解釈を確認することが可能です。しかし,25年ほど前までは,PTAに関する法的な規定や判例がほとんどなく,管理職がPTAに関連する諸問題の対応に苦慮する状況が続いていました。たとえば,PTAの会計事務を勤務時間内に学校事務職員に依頼することは,法令違反となる可能性が指摘されていたためです。

PTA係の思い出

 私が中規模校でPTA係を担当していた時のことです。ある学年で役員を決める学年PTAが夜の18:30に始まりましたが,夜中の23:00になっても結論が出ませんでした。PTA係だった私は自分の学年を済ませると,遅い学年にも担当として顔を出していました。

 学年主任の先生が3名のお母さん方に時間も遅くなったので「ジャンケンで決めましょうか」と何度もお願いしていましたが,誰も応じようとしません。3名のお母さんたちは両手を背中に組んでジャンケンを拒む状況が続いていたのです。その母親の一人が私に気づき困った顔を見せました。前年度に担任した母親でしたので,私がこっそり手を合わせ目で合図を送ると,ようやくその方が引き受けてくださり,24時を過ぎることはありませんでした。このように役員選びは毎年苦労の連続で,教師たちは「今年は日付が変わらずに済むかな」とよく愚痴っていました。

 不思議なことに,役員を引き受けた方々は1年後には見事にリーダーとして成長し,学級をうまくまとめ上げるまでになります。そして,役員を引き受けて良かったと口にされるのです。

PTA活動の良さ

 多くのお母さんたちは会社でも働いており,組織の一員として業務に携わっています。その中で,PTAの担当者として保護者や学校,地域を動かす経験は非常に貴重です。同様の経験をPTAで得ることは,役員を引き受けた方のスキル向上にもつながります。

 かつては「親の世代を教育する祖父母や地域社会」がありました。若い人たちはいきなり親になって,地域社会の役割や親を含め子どもたちが様々な人間関係の中で成長していることを知らないことも多いのです。PTAで先生や保護者,地域の方たちとの連携を通して,子どもたちの健全育成の活動を充実させることは親の世代を成長させることにもなると強く感じています。

 現在PTAを含め,地域社会の中で組織の一員として関わった経験のない方,或いは隣り近所の付き合いさえない大人が非常に増えていると言われます。かつて夜中に集団で教師の自宅に押しかける保護者がいた時代もあり,現在での過激なネット社会での書き込みや個人への誹謗中傷など日本全体がコンプライアンスを問われている時代に入っているように感じます。

 多くのお母さんたちは会社でも組織の中で働いており,人間関係が重要であることを理解しています。PTAも同様ですが,ここでは人間関係がうまくいかなかった場合でも周囲がフォローしてくれますし,どうしても困難な場合でも1年で役員の任期が終わるのです。PTAに関わった方すべてが,「子どもの親」として或いは「地域のリーダー」として研鑽を積む場であるといった考え方も大切なように思います。

□ お知らせ  当ブログの検索方法として「散策ブログ」や「学校よもやま話」と検索すると『散策ブログ~地域の身近な歴史などについて発信し…』や『学校よもやま話~雑感「散策ブログ」』が出てきます。クリックするとブログに繋がり,右下のサイドバーで過去の投稿ページもご覧いただけます。よろしくお願いいたします。
タイトルとURLをコピーしました