開聞岳登山「眺める山と登る山」

うさぎ跳びで登山

 かつて,開聞岳山麓出身の先輩がいました。その先輩は開聞岳には何百回も登ったと言い,「若い頃はうさぎ跳びで登っていたよ」と冗談交じりに話して回りを笑わせていました。標高924メートルと比較的低めで,開聞町内の小学校の遠足でも登っているそうで,登山雑誌を見ても,初心者レベルとされていました。また,登山を始めた頃,グレートトラバース3というNHKの番組を見て,開聞岳と高隈山,高千穂峰などはぜひ登ってみたいと思っていました。その中で,開聞岳が何故か印象に残っており,登ってみることにしたのです。「うさぎ跳びで登れる九州を代表する山」,そのような安心感もあり軽い気持ちで,ドライブの途中,ちょっと登ってみようと思い立ちました。

登拝(とはい)と遥拝(ようはい)

 駐車場から少し歩くと,2合目に登山口があり,登山準備もあまりせずゆっくり登り始めました。2.5合目には休憩所がありましたが,少しずつ疲れが出始め,なんとか5合目の展望台に到着しました。そこには一人の高齢の登山者が休憩しており,私が「開聞岳は思ったより大変ですね」と声をかけると,その方は「山には眺める山と登る山がありますよ」と言われました。山岳信仰の「実際に上る登拝(とはい)と遠くから仰ぎ見る遥拝(ようはい)」のことかと思いきや,楽しみとして「自分は何のために山に登るか」を考えて目的意識を持って登るべきだというのです。なるほどと思い,きつさもあってその日は引き返すことにしました。何ヶ月か後に登頂しましたが,やはり体力以上の山でした。

・開聞岳山頂からの眺め

 私は定年後に「健康づくり」が大きな目的で,夫婦で登山を始めましたので,多くの山を登頂するにつれ,やはり「山に登る理由」を聞かれれば,「解放感」と答えたくなりました。山頂からの眺めは,日常から解放される瞬間でもあります。しかし,開聞岳は登る途中に景色が見られる箇所が少なく,深い木々が視界を遮るため,思ったほどの眺望がありません。開聞岳は遠くから「眺める山」なのだと思いました。同じように近くの矢筈岳(358m)も低山ですが,上り下りが多く400メートルに満たない山とは思えないハードなものでした。(登山を始めた頃で体力がない頃なのでそう感じました…)

・登山道開整記念碑(鹿児島営林署)~番組内で田中陽希さんが紹介していました。

  一方,霧島連山の高千穂や韓国岳なども登頂しましたが,登る途中に景色が広がり,その美しさに疲れも和らぎました。山を登る際,途中の景色を楽しむことも大切な要素の一つだと感じます。

開聞岳の呼び方「海門嶽」

 開聞岳を御神体と仰ぐ開聞神社は,古くは「枚聞(ひらきき)の神」を祀る山として「開聞岳(ひらききだけ)」と呼ばれていました。錦江湾の入口に位置し,まるで門のようにそびえる姿から「海門嶽」とも記し方も存在しますが,これは後の時代,奄美・琉球・中国との交易が盛んになった頃に生まれたものと考えられます。

 大島地区で勤務していた頃,船で帰省する際,朝方に開聞岳と佐多岬が見えると「帰ってきた」と実感したものです。古来より,トカラや奄美を経由して命がけで中国や琉球から帰ってくる人々が,この山を見て安堵したことでしょう。それこそが我が家の門であり,「海門嶽」という呼び名もそこから生まれたのかもしれません。

・三国名勝図絵

・高隈山の御岳

・高隈山の大箆柄岳~大隅半島から薩摩半島まで県内の広い範囲が見られ絶景でした。

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