高隈山で出会った若者たち(その2)

 3年前,初めて高隈山系の御岳を登ったときのことです。山頂で,福岡県から来た若い女性登山者と出会いました。彼女が向いの大箆柄岳の写真を撮っていたので,「撮りましょうか」と声をかけると,笑顔で応じてくれました。私たちは老夫婦で弁当を広げ食事をとっていたこともあり,彼女にとって安心感があったのかもしれません。社交的な女性で結局,登山口の駐車場までいろいろなことを話しながら一緒に下山しました。

・忠兵衛ヶ岳から見る御岳

 彼女は横浜出身で,福岡市の会社に勤めているそうです。大学の登山部出身で山が大好きとのこと。鹿児島の山にもよく登るそうで,「鹿児島には名山が多いので,いつか住んでみたい」と話してくれました。その言葉は,県民としてとても嬉しいものでした。

 テレビドラマ化された『山女日記』の主人公を思い出させるような,はつらつとした女性でした。このドラマは登山を通じて得られる人生観や生き方を描いた作品で,私の好きな番組でした。ここに登場する女性たちの姿は,単に山が好きで登ることを超え,人生を力強く歩む生き方を示しており,録画を見返しては感動しています。

 時代とともに,一人旅や一人登山に対する世間の見方は変わってきました。自分の楽しみや価値観を優先する彼女たちの姿勢は,とても力強く感じられます。一人で山に登ることは確かにリスクを伴いますが,それ以上に得られる「自然の中での自分自身との対話」は,登山者にとってかけがえのない経験になることでしょう。

 大学の登山部出身の彼女にとって,登山は生きがいであり最大の楽しみだったようです。最近では,一人で山を登る女性をよく見かけることが多くなってきました。彼女たちの自由で生き生きとした姿は,私たちの若い頃の女性の生き方とはまた異なり,新鮮に感じられます。

 週末ごとに登山三昧をし,西日本の名山は一通り制覇しているとのことでした。会社の上司に登山部を作ってほしいと頼むものの,「あなた一人で作れば…」と軽くあしらわれるそうです。話の中で職場の雰囲気もよく,彼女の仕事振りも同僚から信頼されているようでした。

 また,彼女の親御さんも,最初は登山ばかりする娘を心配していたようですが,彼女の行動に触れるうちに次第に応援する気持ちに変わっていったとのこと。親心と娘の成長を感じる心温まる話でした。

・高隈山系の先に桜島が見える

 「山」という自然の中で得られる自由と挑戦,その中で培われる生き方は,私たちにも深く感じるものがあります。山を生きがいとし,自分の道を進む女性たちは,とても素敵な時間の使い方をしていると感じます。私自身登山を始めて,ようやくその魅力がわかるようになりました。

 先の福岡の登山青年と彼女ならきっと話が合うでしょうね。同じ趣味を持ち,山への楽しみを共有できる相手がいるというのは,素晴らしいことです。楽しみを共有することで,お互いの価値観や生き方が理解し合えるのかもしれません。

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