前回,全国にある「記者クラブ」のことや「記者クラブを通した報道の自由の弊害」について取り上げました。一部の専門家たちがいくら「血税で議員に近い企業・業界への補助金制度や既得権益をなくして」と政治家や官僚にお願いしても,「電波オークションを取り入れ,テレビを自由化し経済を活性化して」とテレビ局に言ったとしても,自らの自浄作用は望めず,抜本的な改革は期待できない状況がずっと続いています。

10年程前から,テレビのワイドショウは視聴率の低下からの過激な演出,制作費の削減により良質な番組制作ができなくなったと指摘されています。その結果,過去の番組をリメイクして放送したり,朝から晩まで同じ内容の情報番組が放送されるようになってきました。また,番組内で視聴者の関心を引くために,不祥事や失言をした人物への個人攻撃や,芸人たちによる政治・経済に関する批判発言が目立つようになり,番組作りに対する苦情が多く寄せられるようになったそうです。しかし,そうした批判に対して,出演していたタレントたちを中心に開き直るようなコメントをする場面が多く見られるようになってきたのです。
タレントの不適切な発言
かつてタレントの松尾貴史氏が自身のラジオ番組で,「テレビを見たくなければ見なければいい」という趣旨の発言をしていたのを聞いたことがあります。或いは,「空気中を漂っている状態の電波を私たちが新しい価値を付け視聴者が楽しめるようにしてやっているのにクレームをつけること自体おかしい」と言い放った自称ジャーナリストもいました。こういう人たちが番組を作っているのだと知り愕然とした記憶があります。
「電気代しかかからず,テレビをタダで見ているのに批判するのは止めてほしい」と発言した芸人は電波が国民の財産であるのにタダ同然の使用料しか払っていないことを理解していません。あなたの番組を見るたびにCMが流れ間接的にお金を払っているのと同じですよ。(当然ですが,商品の価格は原価に経費が乗っかったもので,経費の中に人件費やCMが入っているのです)。そもそもテレビを持っているだけでNHKの受信料を払っており,そのテレビで民放を見ているのでタダではありません。
国民の財産を借りているテレビ局が,国民に還元する最大の方法が「良質な番組作り」であり,戦後の混乱期に開局したこともあり,その後しばらく使用料が非常に安く設定されていたことを理解していません(何故か今でも安いままですが…)。またその芸人の方は,テレビに出て本来の劇場では得られないほどの莫大な出演料をもらっているのも,この安い公共の電波で経費がかからないからできるのです。もし正当な使用料を支払っていたらこのような出演料は出せません。この方は自身の発言により批判を受けしばらく謹慎させられていましたね。

一方,自由化されているラジオ番組であれば確かに「聞きたくなければ聞かなきゃいい」などもその通りだと思うと同時に,そもそもテレビは公共の電波を使って放送され,自由な参入が出来ず,いわば独占状態なのです。そのような背景を考えると,「面白くなければ見なければいい」という主張は非常に傲慢で無責任なものと強く感じます。
タダ同然の電波使用料
日本では電波使用料が諸外国と比べて非常に安価で,運営的には公共放送と同じようなものです。受信料に加えて税金も投入されているNHKにおいて,もしアナウンサーが「番組の編集権はNHKにあるので,見たくなければ見なければいい」と発言したら,相当な批判が巻き起こるはずです。このような状況を避けるためにも,テレビ放送の在り方を見直し,ラジオの如く放送の自由化を進めるべきだと考えます。(自由化は,既存テレビ局の資質向上につながり,経済的にも好いことだらけだそうです)
さらに,日本の民間テレビ局が支払う電波利用料は数億円程度で,その額は利益の1%未満とされる微々たるものだそうです。東欧諸国の中には農業(80%)を含め各業界に公務員率という言葉があり,税金や補助金の支給率でそれなりの責任が問われるそうです。もしNHKの国や国民への依存度が100%とするならば,公務員率100%となり,民間テレビ局の依存度は99%に相当(あくまでも一つの限定的な計算法)し,もはや「民放」とは名だけで,公務員と何が違うのかと疑問を感じざるを得ません。

そのような組織が放送法を無視し,好き勝手に番組作りを行い,朝から晩まで情報番組の垂れ流し,権利が消失した古い時代劇,ネット動画の投稿を基にした同じようなお笑い番組,制作費のかからないテレビショッピングなどを繰り返す現状には問題があります。また何ヶ月も同じ趣旨の話題やメジャーリーグの話題(大谷翔平選手の活躍は素晴らしく日本人として誇りの持てることなのですが…さすがに度を超えていた一部内容もあったように思います)を交互にしかも前日までと同じ内容を繰り返すような番組構成は,視聴者に新鮮さや多様性を提供しているとは言えません。他局にチャンネルを変えてもこれまた同じ内容,国民が好きな番組を見たくても選ぶことすら叶わないのです。主要テレビ局同士で話し合いをし,時間帯や放送内容まで談合しているとしか思えません。
価値ある番組を作る意欲を失ったテレビ局は,既得権益を国に返還し,この業界から速やかに退き不動産屋(テレビ局の不動産部門は黒字の優等生で,従業員を十分に養っていけるから…)になるべきだと思います。公共の電波を使い一地方の兵庫県知事の同じ話題を全国に執拗に繰り返すことばかり,兵庫県民ならいざ知らず,さすがに嫌気がさし今回初めて社会問題として投稿しました。知事による「県の特産物のおねだりや職員へのパワハラ」をはじめこの程度を悪というなら全国の知事や政治家は全員アウトですよね。
選挙で再選されマスコミのメンツを潰されたはらいせなのか,「意見が対立する問題」なのに,一方向だけの視点で素人の出演者が断罪していたのです。一人をターゲットに全員(全民放)で吊るし上げる今回の報道を兵庫県民以外の方はどのように考えているのでしょうか。鹿児島の県警問題など同じように取り上げてもらいたい重要な案件もたくさんありました。他にも公人(公共の電波を使って有名になったトップ芸人,劇場しか出ていない方は該当しません)でありながら説明責任を果たさず,疑惑から逃げ回っている人もいますよ。芸能担当の方,そっちらの方にも同じように大勢の取材陣で押しかけて「逃げるんですか・説明責任を果たしてください」と,頑張って報道してください。
放送法4条は,放送事業者が放送番組の編集にあたり (1)公安及び善良な風俗を害しないこと (2)政治的に公平であること (3)報道は事実をまげないですること (4)意見が対立する問題については,できるだけ多くの角度から論点を明らかにすることを求めている。 |
まとめと結論
国民の多くが受信料を支払っているNHKに対しては厳しい意見を持っており,ニュースやその他の番組の内容にまで多くの批判が寄せられています。 しかし,週刊誌が報じた調査によると,売上トップのフジテレビは売上高5,199億円,事業収入1,717億円で,利益率は約3割に上ります。一方で,電波使用料はたったの3億5,400万円で,事業収益に対する電波使用料の割合は0.21%とNHKとほぼ同じです。地方テレビ局まで含めると0.07%と,NHKをはるかに下回る水準でほぼ国営放送のようなものです。 それにもかかわらず,これらのテレビ局は一部の「編集権はテレビ局にあるので,見たくなければ見なきゃいい」という発言を訂正もせず放置し,結果的に忖度芸人やタレントを使って視聴者に言わせているのと同じです。近年では視聴率の低下を理由に製作費を削り,朝から晩まで似たような情報番組やお笑い等を垂れ流す状態が続いています。これではジャニーズが吉本に変わっただけで,国境なき記者団から日本に向けられた指摘について反省が生かされていません。「電波は国民の財産」で使用者は効率的な運営に努め,国民に還元しなければならないはずです。開局以来「濡れ手で粟」状態が続いているのです。 アメリカのテレビ局は開局以来,国民の声によって紆余曲折しながら1984年に「くじ引き方式」,1993年に電波オークションを取り入れています。さらに現在は電波利用料が少額になる一方,月額およそ2万円を支払い,190チャンネルが含まれたパッケージを契約の形式が主流になっているそうです。これは,「見たい番組は自分で購入する」という市場経済の論理に基づいたまっとうな仕組みです。また,放送局の免許も原則オークションの対象で,日本のように既得権益に守られた独占状態でなく,本当に番組制作に意欲のある企業が自由に参入できるシステムなのです。 この仕組みにより,オークション収入は年平均約4,600億円に達し,競争原理が働くことで通信業界を含む科学技術分野の発展を促進。結果として,アメリカは世界をリードし,豊かな国となっています。(市場規模が異なるため一概に言えない部分もありますが…) 電波オークションを導入し「自由な市場経済を再構築し国力を復活して欲しい」と求める声も多いのに,こうした訴えに「電波は既得権益」だと聞く耳すらない状態が続いています。「低所得や失業,増税」など国民が苦しい時代ですので,私たちはSNSなどを通じて少しずつ声を上げ,「まずはテレビ業界,次に政治家や官僚,そして豊かな日本」と時代が変わるのを待つべきだと思います。 |