国政選挙の中間発表と費用
近年の国政選挙は,費用が800億円を超えるとも言われています。内訳を見てみると,一番大きいのはやはり人件費のようです。投票所や開票作業に関わるスタッフの手当が中心で,その中でも役場職員の超過勤務手当が,3万数千円台となり,前日の準備から含めると実際はさらに膨らんでいきます。
一方で,会場費は小中学校の体育館を使う場合,電気代も学校の予算内で,基本的には経費はほとんどかかりません。こうしてみると,選挙は「場所」よりも「人」にコストがかかる仕組みだと分かります。今後AIツールを導入し,人件費や作業時間を削減すれば,全体で3〜5割ほど削減できると言われていて,選挙の在り方も,少しずつ変わっていくのかもしれません。
中間発表の在り方

・選挙特番は演出競争
このほかに,前回の投稿でも触れた「中間発表の在り方」についても,見直しが必要であると感じています。これまで言われてきた中間発表の意義についても,最近ではその役割が形骸化しているという指摘も少なくありません。
実際のところ,選挙特番の演出を盛り上げるための材料になっている面もあると言われていますし,そのためだけに多額の経費がかかっていると考えると,少し疑問が残ります。マスコミ自身が「多額の血税が使われている」と強調するのであれば,なおさら中間発表の回数を減らしたり,伝え方を工夫したりといった見直しが求められるのではないでしょうか。
少なくとも,そうした改善が進めば,いわゆる「当確の誤報」を減らすことにもつながりそうです。選挙報道の信頼性を高めるためにも,一度検討する価値はありそうです。
「当選確実」の過熱報道
かつての選挙特番でよく見られた「当選確実」の速報は,とにかく他局より早く出そうという競争が過熱していた印象があります。でも,そのスピード競争にどれほど意味があるのか,疑問に感じてしまいます。しかも,まれに当確の誤報が出てしまうと,その影響は決して小さくありません。だからこそ,安易な速報よりも,正確さや検証を重視した報道が求められているのではないでしょうか。
また,最近の自民党総裁選をめぐる報道などを見ていると,さまざまな違和感を覚えます。特に,高市早苗氏は負けるという趣旨の誤った情報が,一部の専門家と称される人々によって繰り返し発信されていた点は気になりました。選挙結果が出た後,それらの発信について十分な検証や説明がなされないまま,「知らんぷり」で話題が移っていく様子を見ると,これが果たして責任ある報道と言えるのか疑問に思います。
本来,「個々の政治的信条」は尊重されるべきもので,憲法にも示されています。しかし,最近のテレビ報道を見ていると,多様な立場に配慮するというより,特定の見方に偏った内容が目立つように感じられます。その結果,視聴者の側に戸惑いや不信感が生まれているのではないでしょうか。報道には事実を伝えるだけでなく,多様な意見を丁寧にすくい上げる役割もあるはずです。そうした基本に立ち返ることが,今あらためて求められているように思います。
出口調査と「思想・信条の自由」の関係
選挙後に報道機関などが行う出口調査は,あくまで任意のアンケートという位置づけですが,実際に尋ねられている内容は,憲法で保障された「内心の自由」にかなり踏み込んでいるようにも感じます。例えば,「どの候補者や政党に投票したか」や,「政策や政党に対してどう考えているか」といった質問は,いずれも個人の「思想や信条」に深く関わるものです。本来であれば,こうした部分は外から干渉されるべきではない領域のはずです。
もちろん,出口調査は任意で,形式的には思想信条の自由を侵害していないと言いたいのでしょう。ただ実際には,投票所の出口で「どこに入れましたか」と半ば執拗に聞かれるケースもあり,断りづらいと感じる人がいても,不思議ではありません。
大前提として,出口調査は統計を目的とした任意のアンケートですし,本人の同意なく個人情報を第三者に提供してはならないという原則もあります。ただ現実には,選挙特番での「当選確実」の判断材料として使われ,その結果として,自分が支持していない政党に有利に働くように見える報道に違和感を覚える人もいるかもしれません。こうした点を踏まえると,出口調査の方法や伝え方についても,もう少し丁寧な配慮や見直しが求められているのではないかと感じます。

| 出口調査に限らず,会社や地域,様々な組織・団体が投票行動を事実上求める,いわゆる「ぐるみ選挙」も問題視されています。こうした行為は現実に存在し,個人の思想信条の自由や投票の自由を損なうおそれがあるとして,これまでも繰り返し指摘されてきました。そう考えると,出口調査が選挙特番の「当選確実」の判断材料として使われている現状に,違和感や疑問を持つ人がいるのも無理はないように思います。 私自身,地方で校区の公民館役員をしていた頃,農協の理事選挙で票集めが行われている場面を,目の前で見たことがあります。農協の理事選は公職選挙法の対象外なので,それ自体が違法になるわけではありません。ただ,その地域では町長がほぼ農協理事の中から選ばれる状況にあり,実質的には町長選のような意味合いを持っていました。さらに,職場や労働組合,地域ぐるみで投票行動が半ば当然のように共有・確認されているような空気もありました。そうした経験があるからこそ,「誰に投票したか」を尋ねる出口調査にも,どこか似たような違和感を覚えてしまうのです。 |
