全国の官公庁にある「記者クラブ」とは

 「そこまで言って委員会」で,「報道の自由を考える」というテーマの番組がありました。この番組は多様で公平な意見が聞ける点が魅力で,毎回録画して見るほど好きな番組の一つです。

 近年,「フェイクニュース」という言葉が頻繁に聞かれるようになりました。これはトランプ大統領の登場以降,特に注目されるようになった概念です。アメリカのテレビ局では,各局が支持する政治家を明確にしており,トランプ支持派と反トランプ派に大きく分かれています。そのため,フェイクニュースという言葉は主にトランプ陣営が反トランプ派の報道を指して使われることが多いようです。

 歴史もそうですが,勝者の視点で描かれますので,同じ問題を取材した記事であっても立場が違うと内容がまったく異なりフェイクになってしまうのです。ここで大切なことは,両陣営とも相手側はフェイクだと言ってばかりでは話はかみ合わないままです。自分たちの主張のどの点が対立しているのか精査していくことが求められています。

 一方で,日本のテレビ局は放送法により公平性が求められますので,特定の政治家を支持したり反対したりすることが制限されています。しかし,ネットオークションのような競争が存在しないため,報道が一部大手メディアの思惑に偏り過ぎていると言われています。

 例えば,ジャニーズ事務所に関する性加害問題は,2004年に最高裁判決が確定し,国としてこの犯罪が立証されているにもかかわらず,大きなスキャンダルとしてほとんど報道されませんでした。その結果,事務所所属のタレントでさえ判決そのものを知らなかったと後にテレビで報道されていました。 

 これを「報道しない権利」と呼ぶ人もいますが,新聞やテレビを含め多くのマスコミが足並みを揃え,未成年への性加害という大きな社会問題を隠し通したのです。その結果,その後何十年にも渡り被害が続いていたことのマスコミの責任は大きく,国民の「知る権利」が形骸化している事例の一つであると批判されています。

 もしネットオークションがあれば,この問題を当初から報道するテレビ局があったはずです。(もちろん既存勢力による談合が行われない前提ですが…)

 また,一連の問題が「ジャニーズ事務所への忖度だった」と言う人が多いのですが,これは責任逃れで実際はこれまで放送されてきた莫大なジャニーズ・コンテンツが使えなくなる危機感があったという説明の方が腑に落ちるのです。テレビ局はあくまでも番組内でタレントを使う優位な立場であり,タレント事務所はお願いする立場なのです。或いはテレビ局が番組制作の大部分を「ジャニーズ事務所」に丸投げしていたと言うのでしたら納得できます。

世界中へ知られる結果に

 この問題がイギリスで明るみになっても当初は動こうとしなかったマスコミ(これまでのようにダンマリ作戦でやり過ごそうとしていた…?),やはり週刊誌報道が重要な役割を果たしてきました。もし週刊誌やネット発信者がなければ,再び多くの事実が隠され,国民の目に触れることもなかったのでしょう。

 また,このような大きな社会問題でも,マスコミに都合の悪いことは日本の「記者クラブ」では報道されないと知っていた被害者たちが,イギリスBBCを選んだことは非常に賢明な判断だったと思われます。世論を根底から動かそうとした被害者たちの姿勢は,今回の兵庫県知事問題の兵庫県民たちのうねりの行動にまでつながっているように思えるのです。社会問題に敏感な近くの国の国民と異なり(?),この問題に関して大人しい日本人を大きく突き動かしたのです。

 ジャニーズ事務所の性加害疑惑と,それに対する日本社会の「沈黙」は,イギリスBBCのドキュメンタリー番組を通して世界中が知ることになりました。この事件を隠し通した日本の報道機関が国際的に信頼を失っていったのです。「千丈の堤も蟻の一穴より崩れる」 の諺の如く,同じ道をたどっていくのでしょうか。

・国境なき記者団

 今振り返ると,「国境なき記者団」が本当に危惧していたのは,情報源から報道に至るまで大きな既得権益を独占する大手マスコミの影響力によって日本社会そのものが都合よく動かされている現状と,正義に立ち向かうという自由主義社会の根底を否定された日本全体の損失だったのではないでしょうか。日本は本当に世界から特異な存在として映っていたのでしょうね。

記者クラブとは

 今回取り上げた「記者クラブ」とは,公的機関や業界団体などの継続的な取材を目的に,大手メディアを中心に構成された任意の団体です。この組織は,全国の各都道府県単位まで広がり,役所の中に設置されています。例えば官公庁が発表する公務員の不祥事やそれに伴う懲戒処分など確実に情報を入手できる仕組み(条例等)になっています。

 日本における報道の在り方には,閉鎖的な側面や独自性が指摘されています。同じ公務員の不祥事でも,警察関係者や一部官僚の場合,取材ソースとしての協力を得るために,報道内容や報道回数に手加減が見られることがあります。例えば,「逮捕・聴取・送致・勾留・起訴(不起訴)・公判(略式命令)・判決」という一連の刑事手続きの流れを追う中で,その扱いに差が生じるとされています。こうした状況は,世界的に見ても極めて特殊で,日本のマスコミ特有の現象といえるでしょう。

都合のいい報道姿勢

 さらに,関連業界やマスコミ自身の犯罪については,「報道しない権利」が行使されるかのように,報道が極めて限定的であったり,深夜の時間帯にわずかに報道されたりするケースがあります。また,その報道姿勢についても他者には「隠すのですか・逃げるのですか・説明責任は…」と過激に迫っていくのに,自分たちに都合の悪いことは「プライバシーへの配慮」からとの大義名分で報じられないケースもあったとされています。ワイドショーも同様で取材陣が大勢押し寄せる場面が放送される一方,有名なお笑い芸人や大物俳優たちの不祥事については,ネット上で騒がれても詳しい報道が控えられていた例もあります。

 こうした背景から,日本の報道内容は大手メディアの意向に偏っているとの批判を毎年世界の記者団から受けていますが,業界内での自浄作用は乏しく,抜本的な改革は期待できない状況です。

電波オークション導入へ

 このような弊害から本来の「国民の知る権利」を守るには,電波を有効活用するために競争原理を導入する手段として,日本以外の多くの自由国諸国で採用されている「電波オークション」の導入が最も有効だと考えられます。電波は国民共有の大切な資産であり,その解放によって競争が促進され,通信産業をはじめとする経済全体の発展に大きく寄与していくと言われています。

 一般市民が借金で生活が困窮すれば,貯金を切り崩し,家や財産を処分して負債を減らす努力をします。同様に,国も税金の引き上げや年金制度の見直しを国民に求める前に,全国の一等地にある国有地や各省庁の資産の売却,電波や通信などの権利を開放した産業再生など負債を減らす努力をすべきではないでしょうか。

 現在,日本の放送局は営業売上に比べて極めて低額,ほぼ無料に近い電波使用料しか支払っておらず,さらに税制上(消費税)の優遇措置まで受けていると言われています。この状況を見直し,諸外国並みの適正な使用料を課すことで,公平性を確保しつつ財政健全化や産業発展の一助とするべきです。テレビ局が国民の財産「電波」を既得権益として独占し続けているのは時代にまったく合っていないことを肝に銘じておくべきです。

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